現在の60代は、バブル期から景気低迷の時代を経験し、がむしゃらに働いてきた人が多い世代です。そうしたなかには、「長年都心で頑張ってきたのだから、老後は自然豊かな場所でゆっくり過ごしたい」と考える人もいるでしょう。しかし、「老後の地方移住」には、予期せぬ“現実の壁”が潜んでいることも少なくありません。せっかく長年の労働で築いた老後資金が、「夢の移住生活」のためにあっけなく消えてしまうことも……。ある夫婦の事例から、「地方移住」の注意点について、合同会社ミコサポ代表の三藤桂子氏が解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「軽井沢移住、大失敗でした」〈退職金1,500万円〉〈年金280万円〉67歳夫婦の反省会。移住10ヵ月後、息子夫婦も巻き込む老後の大事件となったワケ
東京はもういいや…いつからか抱いた「地方移住」の夢
関東の郊外で育ったAさんは、テレビドラマやワイドショーで映し出される都心の暮らしに憧れを抱き、大学進学を機に念願の上京を果たしました。
学生時代は寮生活を送り、親に負担をかけないようアルバイトにも励みました。学生のころは使えるお金も少なく、テレビで見たような華やかな暮らしは夢のまた夢でした。
就職も都内を希望し、中小企業への入社を決めます。当時はオリンピック景気からバブル期へと向かう時代で、“モーレツ”に働くビジネスマンがステータスだった時代。Aさんも「収入が増えたら憧れの生活が送れる」と信じ、景気の勢いに乗って、仕事や接待などで終電近くまで働く日々を送っていました。
そんな仕事漬けの毎日を送っていたAさんでしたが、20代後半のとき、上司の紹介でお見合いした女性と結婚し、息子が二人生まれます。
その後、バブルが終わり景気が低迷する時代を経て、労働環境や社会経済は大きく変化し、働き方の多様化やワークライフバランスが求められる時代へと移り変わりました。こうした変化のなかで、Aさんは「現役時代は脇目も振らず働いてきた。目まぐるしい東京はもういいかな。退職後は自然に囲まれた地方でゆっくり暮らしたい」と思うようになります。
息子たちはすでに独立し、妻との二人暮らし。60歳で定年を迎え、退職金1,500万円を受け取ったあとも65歳まで再雇用で働き続けたAさんは、67歳を迎え、新たな夢「地方移住」を実現することにしました。
