「親に介護が必要になる」――その日が突然、現実になることも少なくありません。しかも、いざ施設を探し始めると、希望する施設にはすぐ入れないというケースが多々あります。今回は、本命の施設に入れず、とりあえず“つなぎ”のつもりで入れた高額の施設を母が気に入ってしまった……そんな事例を通して、親の介護にかかる費用をどう工面するのか、そして親が残した「自宅」という資産をどう活用するのかを、FPの三原由紀氏が解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「死ぬまでここで暮らしたいわ」…特養は順番待ち、やむなく〈月額29万円の老人ホーム〉へ入居した85歳母。半年後、59歳息子が迫られた“苦渋の判断”【FPの助言】
「ここにいたい」――母の希望を叶えるための選択
和子さんの自宅の査定額は、約1,200万円。売却できれば、預貯金だけを取り崩す場合と比べ、有料老人ホームで暮らし続けられる可能性は大きく高まります。
「母が生きている間は実家を残してあげたい。そんな気持ちがあったんですが……」
母の認知機能がさらに低下し、売るか貸すか自分で判断できなくなれば、息子でも自由に処分できるわけではありません。和子さんは物忘れが増えていますが、今はまだ自分の希望を伝えられ、自宅についても「もう戻れないなら、隆に任せる」と意思を示せました。
隆さんはFPや司法書士に相談し、生前贈与や任意後見制度、リバースモーゲージなども含めて方法を検討。母本人の意思も確認したうえで、「家族信託」を選びました。
家族信託は、本人に判断能力があるうちに契約を結び、契約時点からすぐ財産の管理・処分を家族に託せる仕組みです。和子さんの場合、自宅を信託財産とし、隆さんを受託者として、状況を見ながら売却・賃貸を検討できる形を整えました。これで、いざというときに自宅を介護費に充てられる道筋がついたのです。
実家の資金化に目途がついたことで、隆さんは最終的に特養の入所を辞退し、有料老人ホームで過ごし続けてもらう決断をしました。
「母が有料老人ホームを気に入ったのは、ある意味“誤算”でもありました。ですが、結果的に母の資産を母が安心して生活するために使ってあげられて、今はホッとしています。ただ、実家がそこにある限り、固定資産税や火災保険などがかかり続けます。売却については、あまり時間をおかずに考えなくてはならないと思っているところです」