母の貯金1,800万円でも足りない…息子が目を付けた「もう一つの資産」

とはいえ、費用面でいえば特養と有料老人ホームには大きな差がありました。特養へ移れば、居住費・食費の補足給付なしでも月14万円程度に収まる見込みです。一方で、有料老人ホームは月約29万円で、その差は月約15万円、年間では約180万円にもなります。

では、このまま現在の有料老人ホームで暮らし続けた場合、お金はどのくらい持つのでしょうか。

母の年金は月15万2,000円ですから、年金だけでは足りず、毎月約14万円を預貯金から取り崩し続けることになります。厚生労働省「令和7年簡易生命表」によると、85歳女性の平均余命は8.47年。仮に毎月14万円の取り崩しが8年半ほど続けば約1,423万円に上る計算です。

もちろん、平均余命は個人の寿命を示すものではなく、それ以上長生きする可能性もあります。預貯金1,800万円なら「何とかなる」と思うかもしれません。しかし、残りは380万円ほど。実際には日用品なども必要ですし、今後は物価や人件費の上昇に伴って施設費が変わる可能性もあります。

不足したら、隆さん自身が補填する――それも頭をよぎりました。

しかし、その時点で隆さんの年収は約720万円。住宅ローンが約500万円残り、夫婦の預貯金は約1,300万円。隆さんは来年定年を迎え、退職金はもらえるものの、継続雇用で収入は半減する見込みでした。もし母の介護費まで上乗せになれば共倒れになるリスクがあります。だからこそ、母の介護費は母自身の資金の範囲内に納めなければなりません。

頭を悩ませていた隆さんが目を付けたのが、いまや空き家になった「母の自宅」でした。