私のもとには、「YouTubeで勉強して投資を始めました」「ネット証券で新NISAを始めました」といった投資相談が数多く寄せられます。保有商品を確認すると、多くの方に共通する特徴があります。それは、オルカンやS&P500投信への投資です。もちろん、これらは優れた投資商品です。しかし、保有資産全体を分析すると、本人が思っている以上に米国株と米ドルに集中したポートフォリオになっているケースが少なくありません。今回は投資相談に来られた阿部様(仮名・45歳)の事例をもとに、特定の資産に集中するリスクについて考えてみます。
「この2つを買っておけば安心って聞いたんですけど…?」オルカンとS&P500投信に500万円ずつ投資する45歳会社員、評価額の乱高下に<強い不安>【FPの助言】

オルカンとS&P500投信が人気を集める理由

近年の投資ブームの中心にあるのが、下記2つの投資商品です。

  • オルカン【eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)】
  • S&P500【eMAXIS Slim 米国株式(S&P500投信)】

 

両ファンドを合わせた純資産総額は約26兆円に達し、新NISAの代表的な投資対象として多くの投資家に支持されています。人気の理由はシンプル。過去の運用実績が優れていたからです

 

Apple、Microsoft、NVIDIA、Amazonなど、世界を代表する企業は米国に集中しています。また、過去10年以上にわたり米国株は世界の株式市場をけん引してきました。その結果、「投資するなら米国」という考え方が広く浸透したのです。

 

さらに、オルカンとS&P500投信は「運用コストが低い」「少額から始められる」「個別銘柄を選ぶ必要がない」といった特徴もあり、投資初心者から経験者まで幅広い支持を集めています。

 

YouTubeやSNSでも、「迷ったらオルカン」「S&P500投信を積み立てておけば大丈夫」などの情報を目にする機会が増えました。

 

オルカンは本当に世界分散投資なのか

オルカンは、日本、米国、欧州、新興国など世界中の企業に投資するファンドです。そのため、「オルカン1本で世界分散投資が完成する」と言われることがあります。

 

たしかに投資対象国は世界中に分散されているのですが、投資家が見落としやすい特徴があります。

 

それは、時価総額加重型であることです。現在、世界株式市場の時価総額の約6割を米国企業が占めています。つまり、オルカンに投資すると、結果として約6割が米国株になります。世界中に投資していることは事実ですが、その実態は「米国株中心の世界分散投資」なのです。

 

オルカンとS&P500投信を組み合わせるとどうなるのか

阿部様の場合、以下の配分で株式を保有していました。

  • オルカン:500万円
  • S&P500投信:500万円

 

一見すると2つの商品に分散投資しているように見えます。しかし、中身を分析すると違った姿が見えてきます。

 

オルカン500万円のうち、約300万円は米国株です。そこにS&P500投信の500万円が加わるため、約800万円が米国株となります。つまり、資産全体の約80%が米国株という状態になっているのです。さらに米国株への投資は、実質的にドル資産への投資でもあります。そのため、「米国株集中」「米ドル集中」が同時に発生します。

 

私は米国株投資そのものを否定しているわけではありません。経済大国であり、軍事大国であり、基軸通貨ドルを持つ米国は、今後も重要な投資先であり続ける可能性が高いでしょう。しかし大切なのは、「米国に投資することと米国に集中しすぎることは別の話である」ということです。