生き生きしている元同僚、老け込んだ自分

変化のきっかけは、元同僚との再会でした。近況を聞くと、中小企業に再就職し、週4日働いているとのこと。

「給料は現役の頃よりずっと少ないよ。でも毎朝決まった時間に起きて外に出かけていくから健康にもいいし、職場の若い奴らと話したり、頼りにされたりするのも刺激になるしさ」

そう話す表情は、現役時代よりも生き生きとして見えました。一方で、どこか覇気がなく老け込んでしまっている自分。 「仕事を辞めたかったはずだけど。案外、自分は社会とつながって働いているほうが幸せなのかもしれない」――そんな考えが頭をよぎりました。

地域のボランティアも考えましたが、「毎週決まった時間に通う場所があるほうが、自分には合っている」と感じたそうです。とはいえ、すぐに働こうと思えたわけではありません。

長年大手メーカーで技術者として働いてきた自分が、「今さらアルバイトなんて」「時給で働く姿を知人に見られたくない」――そんな気持ちがあったことも事実です。

下手に働くと年金がカットに?…労働の意欲を削ぐ「働き損」の誤解

もう一つ、野村さんには気になっていたことがありました。「下手に働くと、国から年金をカットされてしまって働き損になるのではないか」というイメージを持っていたのです。

これは、リタイア前後の人からよく聞かれる疑問です。

公的年金には「在職老齢年金」という制度があり、働いて得る給与(総報酬月額相当額)と老齢厚生年金(基本月額)の合計が65万円(※)を超えると、超えた分だけ厚生年金が支給停止になります。
※令和8年度の基準額で、毎年度、賃金の変動に応じて改定される(日本年金機構ホームページより)。 

判定対象になるのは「老齢厚生年金」のみです。以前は減額対象となる基準額が低く設定されていたため「働くと損をする」というイメージが定着していました。しかし、制度改正によって2026年4月に基準が大幅に引き上げられ、以前よりも支給停止の対象になりにくくなっています。

そのため、野村さんのようにアルバイト収入が月7万5,000円程度であれば、在職老齢年金の支給停止に該当しないケースも十分考えられます。「働いたら必ず年金が減る」というわけではありません。

制度を確認し、「自分の場合は問題なさそうだ」と分かったことで、野村さんは安心して仕事探しを始めることができました。