親と子が離れて暮らすことが一般的になり、「遠くに住む高齢の親の様子」がわからない方も増えています。少し前に会ったときは元気でも、気づいたら手遅れになっている可能性も考えられます。「子どもに心配をかけたくない」という思いから本当の状況を隠してしまう親もいるようですが、逆にそれが子の後悔を大きくしてしまうこともあるようです。83歳父と55歳息子の事例をもとに、CFPの山﨑裕佳子氏が老後に向けて必要な備えについて解説します。
「仕送り、もういらないよ」…年金月10万円・83歳父の言葉に胸騒ぎ。「毎月5万円の援助」を15年続けた55歳息子が、実家で目撃した〈衝撃の光景〉【CFPの助言】
タンスも鏡台も食器棚もない…実家で目撃した〈衝撃的な光景〉
玄関を開けると、すぐに家の様子がこれまでと違うことに気がつきました。整理整頓されすぎているというより、明らかに物が少ないのです。
もともと綺麗好きでしたが、それでも違和感があります。カズオさんのいる奥の居間兼食堂に足を踏み入れると、亡き母が嫁入り道具として持ってきたタンスや鏡台などの家具がすっかりなくなっており、食堂にあった大きな食器棚も見当たりません。「おう、どうした。珍しいな」と気丈に振る舞うカズオさんに、ミノルさんは言いました。
「親父、いったいどうしたんだ? なんにもないじゃないか」
カズオさんはしばらく黙っていましたが、観念したように口を開きました。
「実はな、お前に心配かけたくなくて黙ってたんだが、俺もう長くないんだ。……来月、入院することになってな。入院といっても緩和ケアだ。余命は長くて半年くらいといわれてる」
なんと、カズオさんは自身の最期を見据え、密かに「終活」で身辺整理を進めていたというのです。
「そんな……なんでいってくれなかったんだよ」
まさかの事実に、ミノルさんは言葉を失いました。
父の余命を知り、息子は「最後の親孝行」をすることに
「もっと頻繁に様子を見に来ていれば、親父の変化に気づけたのに……」
ミノルさんは後悔しています。毎月仕送りを続けることで、「これが親孝行になっている」と、どこかで安心してしまっていたのです。カズオさんが病気や余命について誰にも相談せずに一人で終活を進めていたと思うと、胸が痛みます。
告白を受け、ミノルさんは父との時間を最優先にすることに。それから、週末はカズオさんとできるだけ多くの時間を共有しました。
同時に、事務的な手続きやお金回りの整理もミノルさんが引き継ぎました。カズオさんの預貯金や有価証券、生命保険の有無などを確認していると、ミノルさんが送っていた仕送りの大半はそのまま貯金されていたことが判明。息子を想い、父は倹約生活を続けていたのでしょう。
入院後の医療費についても調べた結果、「高額療養費制度」が利用できるかもしれないこともわかりました。
