親が高齢になり、すでに高齢者施設へ入所させている、あるいは入所を検討している方も多いでしょう。プロが常駐し、セキュリティも整った施設であれば「入所させれば安心」と思いがちですが、必ずしもそうとは限りません。特に入所者が認知症を患っている場合、思わぬトラブルが起きることがあります。今回は、82歳の母が遭遇した事例をもとに、老人ホームでの物品紛失トラブルを防ぐための「自衛策」について、弁護士・山村暢彦氏が解説します。
「誰かが盗んだのよ!」82歳母が有料老人ホームで〈50万円・形見の指輪〉を紛失…犯人発覚も、55歳息子に残った「やり場のない思い」【弁護士の助言】
【弁護士の助言】老人ホームでのトラブルを防ぐ、家族側の「自衛策」
認知症などにより判断能力が低下している方が、他の入居者の物を持ち出した場合、本人にどこまで法的責任を問えるかは慎重に考える必要があります。
責任能力がはっきりしない方に対して、通常の窃盗や不法行為と同じように責任追及することは難しい、というのが法律上の基本的な考え方です。
そのため、施設側が事実確認を行ったうえで、施設の管理体制や加入している損害賠償責任保険による補償を検討することは、法的に不自然な対応ではありません。特に、他室への立入りや徘徊の傾向を施設が把握していた場合には、見守り体制や施錠管理、貴重品管理の説明が十分だったかが問題になります。
もっとも、今回持ち出されたものが単なる50万円相当の指輪ではなく、思い出の詰まった「形見の指輪」であった点は重く見るべきです。金銭的に補償されたとしても、家族にとっての喪失感や不信感まで回復できるわけではありません。法律や賠償では、気持ちまでは救いきれないのが現実です。
だからこそ、入居時には、貴重品の持込みや保管方法、施錠、防犯体制、紛失時の補償範囲などを確認しておくことが重要です。大切な物の被害回復には限界がある以上、残念ながら、家族側でも「持ち込まない・預ける・記録を残す」など、自発的な防衛策を取る必要があるといえるでしょう。
山村 暢彦
弁護士法人山村法律事務所
代表弁護士
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