兄のもとへ繰り返し金銭援助を求める年金暮らしの母と、「自称ミュージシャン」の弟。兄としてはなんとかこの無心を止めたいところですが、「手切れ金」を渡すことで絶縁することは可能なのでしょうか。弁護士法人山村法律事務所の山村暢彦弁護士が、事例をもとに解説します。
「53歳・無職の弟」と「年金暮らしの母」から何度も無心…手取り54万円・57歳長男が〈手切れ金80万円〉で絶縁宣言【弁護士が「扶養義務」の境界線を解説】
「年金暮らしの母」と「無職の弟」に頭を抱える57歳長男
「実家の番号から着信があるだけでストレスです。また金の無心かと思うと怖くて……」
タカシさん(仮名・57歳)は都内のメーカーに勤めており、月の収入は手取りで約54万円です。二人の子どもはすでに独立し、住宅ローンも完済。現在は妻と穏やかに暮らしながら、自分たちの老後資金を着実に準備しているところです。
そんなタカシさんの悩みの種は、神奈川県の実家に暮らす母(78歳)と弟(53歳)。弟は大学卒業後に一度就職したもののすぐに退職し、それ以来「俺はミュージシャンとして成功する」と言い張り、実家に居座っています。高額なギターや自宅用録音機材の費用をはじめ、日々の生活費もすべて母が肩代わりしてきました。
母が年金暮らしになってからは、「生活費が足りない」「弟の遠征費が必要になった」などと、タカシさんのもとにたびたび「金銭援助」の相談が寄せられるようになりました。
4年前に父が他界した際、タカシさんはそんな二人を案じて、自分の相続分をすべて放棄。しかし、その優しさが結果的に二人の金銭感覚をさらに狂わせる要因になってしまったのです。
「80万円用立てて」の要求を拒否…叔母からの連絡で発覚した親戚中への借金
半年ほど前、母から突然「80万円用立ててほしい」と電話がありました。内訳を聞くと、弟がソロで配信する新曲の制作・プロモーション費用と、滞納している固定資産税の支払いだといいます。タカシさんが「俺にそんな余裕はない。弟にアルバイトでもさせて少しは稼がせるべきだ」と断ると、母の態度は豹変しました。
「長男のくせに見捨てるの? 子どもの入学祝いだって出してやったのに薄情だね!」
過去の恩を盾に激しくなじられ、電話の向こうからは弟の「俺の才能を潰す気かよ!」という罵声まで聞こえてきます。
限界を迎えたタカシさんは、母からの電話を着信拒否。すると数ヵ月後、今度は叔母からタカシさんのもとに連絡が入りました。その内容に、タカシさんは開いた口が塞がりません。
「あんたの母が、親戚中に『金を貸して』と電話をかけまくってるわよ」
どうやら、すでに父の遺産は底をついている様子。それでも母は息子の夢のために、借金を重ねようとしていたのです。
