マッチングアプリやSNSを通した出会いが一般的になった現代において、相手の素性を十分に知らないまま、結婚目前まで関係が進むケースも増えています。なかには、相手が既婚であることを隠し、深刻なトラブルに発展する例もあります。もし交際が相手の配偶者に知られれば、高額な慰謝料を請求される恐れも……。では、このような状況に直面した場合、どのように対応すべきなのでしょうか。31歳女性の事例を通して、弁護士・山村暢彦氏が解説します。
「もしもし、妻ですけど」…年収1,200万円・38歳エリートから〈プロポーズ予告〉を受けた31歳女性。幸せの絶頂から一転、電話越しに請求された〈300万円の慰謝料〉【弁護士が解説】
「騙された私が300万円払うの?」…“理不尽な”不倫の代償
「彼の言葉を完全に信じ切っていましたし、もし既婚者だと知っていたら絶対に付き合っていません」
ミカさんは絶望と同時に、怒りを感じています。
「騙されたのは私のほうなのに、どうして私が300万円もの慰謝料を払わなければならないんでしょうか? むしろ独身だと嘘をついて、私の時間を奪った彼に慰謝料を請求してやりたいくらいです」
現在ミカさんのもとには、タクミさんの妻の代理人弁護士から、正式に慰謝料を請求する書面が届いています。そこには予告どおり、「期限内に支払いがなければ法的措置に移行する」という文面が並んでいました。
幸せな未来を夢見ていたミカさんの日常は、身勝手な既婚男性の嘘によって、一夜にして泥沼のトラブルへと引きずり込まれてしまったのです。
【弁護士が解説】「独身偽装トラブル」が増加中…不貞慰謝料の争点
近年、マッチングアプリやSNSを通じた出会いが増えたこともあり、既婚者が独身と偽って交際する、いわゆる「独身偽装」の相談が増えています。
実際、妻子ある男性が「バツイチ」と偽って交際し、妊娠・出産に至った事案で、東京地裁が男性に約460万円の慰謝料等の支払いを命じた事件が報じられています。
もっとも、男性の妻からの不貞慰謝料請求と、男性に対する責任追及は別問題です。不貞慰謝料では、ミカさんが相手を既婚者と知っていたか、または通常注意すれば知り得たかが重要な争点になります。独身だと説明され、結婚の話まで出ていたのであれば、当然に300万円を支払うべきとはいえません。
一方で、妻側からみれば、ミカさんは夫と交際していた相手であり、事情を知らなければ「不貞相手」と受け止められます。そのため、男性の妻に対しては感情的に反論するのではなく、独身だと説明されたLINEや結婚の約束の証拠、紹介経緯、交際状況などの証拠を冷静に整理し、必要に応じて提示することが重要です。
また、男性に対しては、独身と偽って結婚を期待させたことについて、貞操権侵害や婚約破棄を理由に慰謝料請求を検討できる可能性があります。請求書が届いた段階で、一人で抱え込まずに、早期に弁護士へ相談することをおすすめします。
山村 暢彦
弁護士法人山村法律事務所
代表弁護士
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