4LDKの一軒家を手放し「1DKの都営団地」へ引っ越し…老後のライフプランにおける手元資金の重要性

その後、マサミチさんは今後も続く住宅の維持費や修繕費を考え、自宅を売却する決断をしました。

仮に繰り上げ返済を行わなかった場合、マサミチさん家の毎月のキャッシュフローは以下のようになります。

年金収入:20万円

住宅ローン返済:14万円

その他生活費:18万円

毎月の収支:-12万円

このように、毎月14万円の住宅ローン返済が続くため、年金収入だけでは生活費を賄えず、毎月約12万円の赤字となる可能性があります。その場合、貯蓄を生活費として取り崩す生活になります。

もっとも、75歳で住宅ローンを完済すれば返済負担はなくなります。毎月約12万円の赤字と100万円の修繕費を見込んでも、単純計算では75歳時点で約360万円の資産が残る計算です。

その間に生活費の見直しや働き方の変更、資産の有効活用などの対策を講じる時間的な余裕も生まれるため、今回のように資金不足を理由として早期に自宅を売却する必要性は低かった可能性があります。

現在、マサミチさんは夫婦で1DKの都営団地に暮らしています。

自宅を売却したことでまとまった資金を確保でき、現在の生活は以前より安定しています。しかし、マサミチさんは「あんなに苦労して住宅ローンを返した家を手放すことになるなんて思わなかった」と複雑な心境を口にします。

住宅ローンの繰り上げ返済は、利息負担を軽減できる有効な選択肢です。一方で、退職金などのまとまった資金をすべて返済に充ててしまうと、修繕費や医療費など老後の予想外の支出に対応できなくなるおそれがあります。

老後の安心につながるのは「住宅ローンを完済すること」だけではありません。急な出費にも対応できる十分な手元資金を確保しながら、自分に合った老後のライフプランを立てましょう。

辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表/CFP