「家族だから、いざというときは助け合えるもの」。そう考えている人は少なくありません。特に独身で暮らしている人にとって、きょうだいや甥・姪の存在は大きな心の支えになるものです。しかし、その思いは相手も同じとは限りません。57歳の独身女性が、弟から告げられた思いがけない一言。その言葉は、家族との関係だけでなく、自分自身の老後について考えるきっかけになりました。FPの三原由紀氏が詳しく解説します。
「うちの子をアテにするなよ」…年収430万円・57歳女性が凍り付いた日。“老後は姪っ子のお世話に”無意識の甘えに突き付けられた、シビアな現実【FPが解説】
増える単身高齢者…「家族がいるから安心」とは言えない時代に
由美さんの不安は、決して特別なものではありません。国立社会保障・人口問題研究所の2024年推計によると、2050年には65 歳以上の単独世帯の割合は45.1%に達すると見込まれています。高齢者の2人に1人が、一人暮らしで老後を迎える可能性があるということです。
また、内閣府「男女共同参画白書2022年版」によると、50歳時点で一度も結婚したことがない人の割合は男性28.25%、女性17.81%となっています。
独身のまま中高年期を迎える人は、もはや珍しい存在ではありません。一方で、多くの人が見落としがちなのが「家族内の関係性の変化」です。甥や姪は、いつまでも子どもではありません。就職し、結婚し、自分自身の家庭を持ちます。
すると、叔父や叔母との関係も変化していきます。本人は「家族だから助け合える」と思っていても、相手は「大切な親族の一人」と考えているだけかもしれません。その認識の違いが、老後への不安として表面化するケースも少なくないのです。
「誰かを頼る」ではなく「頼れる仕組みを知る」という考え方
由美さんは弟の言葉に傷つきました。しかし冷静になって考えると、弟が言いたかったことも理解できました。老後の安心は、家族の善意だけに委ねるものではありません。
まず、由美さんのケースで気になるのは年金と生活費のバランスです。65歳時点の年金見込額は月13万円弱。賃貸マンションの家賃が仮に月7万円だとすると、残る生活費は6万円ほどです。食費・光熱費・医療費などを考えると、心もとない水準です。
もし65歳から75歳まで10年間、毎月3万円を預貯金から補填し続けると、それだけで360万円が消えていく計算になります。預貯金1,200万円は一見余裕があるように見えますが、賃貸で暮らし続けながら90歳まで生きるとすれば、25年間の生活費を自力で賄う必要があります。
繰り下げ受給という選択肢もあります。例えば、年金の受け取りを65歳から70歳に5年繰り下げると、受給額は42%増額されます(1カ月の繰下げにつき0.7%増)(※1)。月13万円が月18.5万円になる計算で、長生きするほど有利になります。
繰り下げて70歳まで働き続けられるかという問題はありますが、「繰り下げという選択肢があること」を知っているだけで、老後の見通しは変わります。
一方、将来もし判断能力が低下した場合に備えて、財産管理や契約の手続きを信頼できる人に任せる制度として、成年後見制度(※2)もあります。成年後見制度は、本人に代わって財産管理や契約手続きを支援する制度です。
もちろん、制度だけですべての不安が解消するわけではありません。それでも、「誰かが何とかしてくれるだろう」と考えるのと、「必要な備えを自分で整えておく」のとでは大きな違いがあります。
由美さんも最近、ねんきん定期便を改めて見返しながら、老後資金の試算や終活ノートの作成を始めました。
「弟の言葉はショックでした。でも、今考えると現実を見つめるきっかけになったのかもしれません」
老後の安心は、家族の人数で決まるものではありません。「家族がいるから大丈夫」と思っている人ほど、一度立ち止まって考えてみる価値があるのかもしれません。
(出所)
※1 日本年金機構「年金の繰下げ受給」(
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/kuriage-kurisage/20140421-02.html)
※2 厚生労働省「成年後見制度」( https://guardianship.mhlw.go.jp/personal/)
三原 由紀
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