厚生労働省「令和5年国民生活基礎調査の概況」によると、世帯年収1,000万円超の家庭は約11.7%とされています。ただ、この上位10%の家庭であっても「家が買えない」と嘆く現実があるのです。いったいなぜなのか、日本(特に首都圏)が直面する深刻な問題を、事例をもとにみていきましょう。
世帯年収1,000万円だが…神奈川県・川崎市在住の35歳夫婦「買える家がない」と嘆くワケ【親の遺産に期待して後悔】
引っ越したほうがいいのは重々承知だが…
「物件情報サイトをみるたび、ため息がでます。もしも家を買ったり別の賃貸に引っ越したりすれば、毎月の住居費負担が数万円単位で増えるのは確実です。それなら『今の家でいいか』と、どうしても腰が重くなってしまって……」
ただ、現状維持にも限界が近づいています。
夫婦は現在、2人目の子どもを検討しているとのこと。もしも家族が増えると、現在暮らしている2LDKの賃貸マンションが手狭になることは目に見えています。理想の立地と予算の壁に挟まれ、夫婦はいわゆる「引っ越し難民」の状態に陥っているのです。
「いつかは実家を相続できるから大丈夫、という甘い考えも、どこかにあったのかもしれません」
チサトさんはそう後悔を口にします。
首都圏の不動産高騰と「親の遺産」をあてにするリスク
ダイスケさん夫婦のように、実家の資産背景を視野に入れつつも、目前の住宅価格高騰によって身動きが取れなくなる現役世代は少なくありません。
しかし、将来的な「親からの相続」を前提にライフプランを組み立てることには、大きなリスクが伴います。
MUFG資産形成研究所が公表した「退職前後世代が経験した資産承継に関する実態調査(2020年)」によると、日本における相続一件あたりの平均相続金額は3,273万円とされています。
しかし、この数字はひと握りの富裕層が平均値を大きく引き上げており、中央値は1,600万円です。さらに、相続財産は約半数が「自宅一戸建て」などの不動産であり、現金や預貯金のように簡単に分割できないケースが大半を占めます。
また、親世代の「長寿化」も、相続を前提としたライフプランがリスクとされる要因のひとつです。
厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」では、日本人の最新の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.13歳となっています。親が長生きしてくれるのは喜ばしいことですが、子どもが家を必要とする30代〜40代の時点で親はまだ健在であり、実際に相続が発生する時期には、子ども自身もすでに50代〜60代のシニア層に達しているという「老老相続」の構図が一般的になっているのです。
