厚生労働省「令和5年国民生活基礎調査の概況」によると、世帯年収1,000万円超の家庭は約11.7%とされています。ただ、この上位10%の家庭であっても「家が買えない」と嘆く現実があるのです。いったいなぜなのか、日本(特に首都圏)が直面する深刻な問題を、事例をもとにみていきましょう。
世帯年収1,000万円だが…神奈川県・川崎市在住の35歳夫婦「買える家がない」と嘆くワケ【親の遺産に期待して後悔】
世帯年収大台も…「買える家がない」と嘆く共働き夫婦
神奈川県・川崎市の賃貸マンションで暮らすダイスケさん(仮名・35歳)・チサトさん(仮名・35歳)夫婦。
夫婦はともに都内勤務で、ダイスケさんの年収が700万円、チサトさんが300万円(時短勤務)と、世帯年収は1,000万円の大台に乗っています。2歳になる長男にも恵まれ、一見すると順風満帆な家庭です。しかし、夫婦にはいま、深刻な悩みがありました。
「そろそろマイホームを、と思っているのですが、希望するエリアで買える家が本当に見つからないんです」
ダイスケさんはそうため息をつきます。
最大のネックは、夫婦の勤務形態と立地条件です。ともに原則リモートワークはなく、週5日の都内への出勤が義務づけられています。さらに、ダイスケさんの勤務先は新宿周辺、チサトさんの勤務先は渋谷周辺と、同じ23区内でも電車で20分ほどの距離があります。
どちらの通勤にも便利で、かつスムーズに転園できるエリアとなると、選択肢は限定されます。また、東京23区内の保育園事情は依然としてシビアであり、特に3歳未満児の途中入園はハードルが高く、下手に動いて「待機児童」になるリスクを考えると、簡単に市境を越える引っ越しには踏み切れません。
あまりに居心地が良すぎる現在の住まい
さらに夫婦の足を鈍らせているのが、現在暮らしているエリアへの「愛着」です。
夫婦が住んでいるのは川崎市のなかでも人気のエリアであり、駅周辺の商業施設に加えて公園などの緑地も充実、子育て環境としては申し分ありません。また最寄り駅までも徒歩10分圏内のため、利便性も気に入っています。
現在の賃貸マンションには入居して5年が経ちますが、大家が非常に親切な人物で、2度の契約更新を経た今も家賃は据え置かれたままです。一方、この5年間で近隣のマンション・戸建価格は激変しました。
「家を買おうと思い立ったとき、まず今住んでいるエリアの周辺で探しました。そこで、物件価格の高騰に驚いて……引っ越し当初の相場を知っているだけに、周辺で住み替えると損した気になるのでやめたんです」
