「金融資産1億円以上、5億円未満」が富裕層の定義です。最近では、NISAを活用した長期積立投資や株高の恩恵で、普通の会社員が「いつの間にか富裕層」へ仲間入りするケースも少なくありません。そのなかにはFIREを夢見る人もいるようですが、安易にFIREを選択してしまうと想定外の事態に陥ることもあります。憧れのFIRE生活を手にした43歳男性の事例をもとに、CFPの山﨑裕佳子氏が解説します。
「明日から一生無職だ!」40歳でFIREした〈資産1.2億円〉元会社員。3年後、“死んだ魚の目”で「幸せとは程遠い」と悟ったワケ【CFPが解説】
「4%ルール」は机上の空論?…FIREに潜む5つのリスク
FIREに憧れを抱く人がいる一方で、実現後に「こんなはずではなかった。思っていた生活と違っていた」などと感じる人も少なくありません。資産が目減りしていく不安から、精神的な豊かさを感じられなくなることも要因のひとつのようです。
FIREで一般的に用いられる「4%ルール」をご存じでしょうか。たとえば、利回り4%を前提とすると、年間生活費300万円の人であれば7,500万円、生活費が400万円なら1億円、500万円なら1.25億円の資産があれば、資産を減らすことなく生活できるという考え方です。
ただし、この考え方は理論上のものであり、当然4%の保証はありません。実際にはさまざまなリスクが存在します。
1.資産が減る不安
FIREは、その後一生資産が減る不安と付き合い続けなければいけません。投資資産には必ず価格変動があります。株価暴落で資産が大幅に目減りしたとき、想定していた運用益を得られなくなるため、資産を取り崩すペースが早まります。
2.インフレ問題
いまは、300万円~400万円で年間生活費を賄えていても、この先、物価が上昇すれば生活費は不足することが考えられます。物価上昇率に見合った利回りが期待できなければ資産の目減りスピードは加速します。
3.社会保険や税制上のデメリット
会社を辞めることで生じる、社会保険や税制上のデメリットもあります。会社員時代は厚生年金や健康保険は会社側が半分を負担してくれていましたが、退職すれば、国民年金や国民健康保険は全額自己負担です。将来の年金額にも影響します。
4.医療費や介護にかかる費用
将来の医療や介護にかかる費用も、けっして無視できません。年齢を重ねれば病気や介護のリスクは高まります。いまは十分な資産があるように思えても、長生きによる「お金が足りなくなるリスク」は常につきまといます。
5.精神衛生上のリスク
仕事を一生懸命してきた人ほど、退職して急に時間ができると「毎日、なにをすればいいかわからない」という悩みを抱えやすくなります。お金の問題だけでなく、仕事を辞めたあとの生活イメージがあるのか、仕事以外の生きがいを持っているのかという点は重要です。
「サイドFIRE」という現実的な選択肢
FIREは「働かずして楽をする」ということではなく、本質は「お金に縛られずに自分らしい生き方を選べる状態をつくること」です。
得てして「隣の芝生は青く見える」もの。忙しく働いているときは、「働かずして好きなことをして生きていける」状態に憧れる一方で、実際にそういう状態になれば、物足りなさを感じる場面もあるでしょう。
最近では、完全にリタイアするのではなく、資産運用で生活費の一部を賄いながら、必要最低限の収入を得て生活するスタイルの「サイドFIRE」を選択する人も増えているようです。社会とのつながりも維持され、精神的な安心感も得られるため、現実的な選択肢として支持されやすいようです。
いずれにしても、100歳まで資金が枯渇することなく生活ができるのかなど、さまざまな角度からシミュレーションすることが大切です。
FP事務所MIRAI
山﨑 裕佳子
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
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