「お金」はどうしている?

クミコさんの体力的、精神的な負担に対する配慮や、家事代行に対する労いの言葉は、日を追うごとに薄れていきました。

「最初は喜んでやっていたはずなのに、ある日の夜、疲れ果てて自宅に戻ったとき、ふと『なんで私はここまで自分を犠牲にして尽くさなきゃいけないんだろう』と思ってしまったんです。自分の時間も体力も、すべて吸い取られていくような感覚でした」

娘夫婦は、ここまで尽くしてくれるクミコさんに対して、金銭は一切渡していないといいます。年金月13万円の限られた生活のなか、娘夫婦の家へ通うための交通費や日々の食材費が、クミコさんの家計を圧迫していきました。

「孫はいまでも本当にかわいいです。成長を見るのは嬉しい。でも、正直もうしばらくは会わなくていいかな……というのが本音です」

現在、孫は保育園に入園したものの、娘からスマートフォンに連絡が入るたび、クミコさんは「また急な呼び出しや、休日の子守りの要請ではないか」と怯えるようになってしまったといいます。

「核家族で共働き」の限界

厚生労働省の「2025(令和6)年国民生活基礎調査」によると、児童のいる世帯数(907万4,000世帯)のうち、「核家族」は784万2,000世帯とされています。その割合は約86%と、かつてのような三世代同居による日常的な育児の分散はほとんどの世帯で行われていない状況です。

一方、共働き世帯は増加の一途を辿っています。総務省統計局が2025年2月に公表した「労働力調査(詳細集計)」によると、2024年時点の共働き世帯は1,300万世帯と、前年(2023年)の1,278万世帯から22万増加しました。

親から“搾取”する子ども

こうした状況のなか、公的な保育サービスや民間サポートだけでは埋めきれない育児の穴を、近隣に住む祖父母に頼る共働きの核家族世帯は少なくありません。ただし、ここには重大なリスクと問題点が潜んでいます。

高齢の親に対する過度な依存で問題なのが、「経済的・精神的な搾取」の構造です。

子ども世代が親の支援を「便利な無償の人手」と捉えることで、親側の自由な時間や、年金から支出される細かな生活コストが顧みられなくなります。