内閣府が公表した「令和6年版高齢者白書」によると、65歳以上の84.5%が「持ち家」で暮らしているそうです。住宅ローンを払い終え月々の費用もかからず、なにより家族との思い出が詰まったマイホーム、一見すると手放す理由は見当たりません。しかしなかには、わざわざ自宅を売却して賃貸に住み替えるシニアもいるようです。いったいなぜなのか、事例をもとにみていきましょう。
息子には反対されましたが…年金月15万円の69歳男性が「5LDK・庭付き戸建」を売り払って“団地暮らし”を選んだワケ
父の「ド正論」に黙り込む息子
「……そこまで言うんなら、お前もこの家の維持・管理を手伝ってくれるのか? 金も手間も親任せのくせに『思い出だから』と反対するのは、大人として無責任だろう」
父親の言葉に黙り込む息子。
後日、反省した様子の息子は、実家の売却準備を手伝ってくれたそうです。
実家を売ったマコトさんの“セカンドライフ”
戸建てを売却した資金をもとに、マコトさんは駅やスーパー、病院が徒歩圏内にある利便性の高い団地へ引っ越しました。
部屋数は大幅に減りましたが、ワンフロアの暮らしは掃除が劇的に楽になり、庭の手入れから解放されたことで、精神的なゆとりが生まれたといいます。
「息子には反対されましたが、あのまま無理して住み続けなくて本当に良かった。思い出の家に住めなくなるのは寂しいです。でも、家を売却したことでお金にも余裕ができたし、余生を楽しむ準備ができました」
急増する「空き家」と不動産相続のシビアな現実
総務省が発表した「令和5年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家数は900万2,000戸と過去最多を更新し、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.8%に達しました。このうち、賃貸用や売却用などを除く「その他の住宅(長期にわたり居住実態がない個人の持ち家など)」は385万6,000戸にのぼり、空き家全体の大きな割合を占めています。
実家が空き家になってしまう主な原因の1つが「相続」です。親が亡くなったあと、子ども世代にはすでに自身の持ち家があることが多く、誰も実家に住まないケースが多発しています。
不動産を複数人の相続人で分割することが難しく、遺産分割協議がまとまらないまま放置されたり、立地条件や老朽化のせいで買い手・借り手が見つからなかったりすることで、多くの実家が“負動産”として放置されているのです。
空き家を放置すれば、固定資産税がかかり続けるだけでなく、特定空家等に指定された場合に税制上の優遇措置が受けられなくなるなど、子ども世代に重い経済的・心理的負担を課すことになります。
