厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、日本では同居20年以上の「熟年離婚」は、統計のある1947年以降で過去最高を更新し続けています。離婚理由は千差万別ですが、なかには「子の離婚」を望む親も……。いったいなぜなのか。また、そんなことは可能なのか。「息子と嫁を別れさせたい」と弁護士のもとを訪れた、69歳女性の事例をみていきましょう。弁護士が解説します。
息子を別れさせたいんです…「年金月13万円」「貯金2,500万円」69歳母の願望が“過干渉な毒親”とはいえない深刻な理由【弁護士の助言】
親が子を離婚させることはできない。しかし…
まず前提として、親であるキヨミさんが、息子夫婦を直接離婚させることはできません。
離婚はあくまで夫婦間の問題であり、本人であるタクヤさんが離婚の意思を持つことが出発点です。いくら母親が「別れさせたい」と考えても、弁護士が本人の意思を飛び越えて離婚手続きを進めることはできません。
もっとも、本件は単なる親の過干渉とは言い切れないでしょう。配偶者から継続的に経済的な要求を受け、自分の判断を失っているような状態であれば、いわゆるモラルハラスメントや経済的支配が問題となる可能性があります。
ただし、「妻が強い」「夫が従っている」というだけで直ちに裁判上の離婚事由が認められるわけではありません。離婚を考えるのであれば、実際の暴言や金銭要求、親族への不当な干渉、精神的支配を示すLINEや録音、家計資料などを積み重ねる必要があります。
現実的には、まずタクヤさん本人が専門家に相談し、自分の意思で別居や離婚協議を検討できる状態を作ることが重要です。母親としては、感情的に妻を責めるよりも、息子が安全に相談できる環境を整え、必要であれば一時的な避難先や生活費の支援を行うほうが実務的でしょう。
また、キヨミさん自身の財産については、息子夫婦の生活費や住宅資金として当然に提供する義務はありません。実家売却や贈与には決して応じず、遺言や財産管理の方針を整理することをおすすめします。
今回紹介したケースの場合、「離婚させる」よりも、まずは息子本人の意思確認と証拠の収集、そして母親自身の財産防衛を分けて考えることが重要といえるでしょう。
山村 暢彦
弁護士法人山村法律事務所
代表弁護士
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