都市部の家賃高騰は、単なる家計の圧迫を超え、高齢者の住まいを奪う深刻な事態を招いています。年金月13万円で暮らす74歳女性の事例をもとに誰もが直面し得る居住選別の厳しい現実と、その対策をみていきましょう。辻本剛士CFPが解説します。
年金月13万円の74歳女性「後悔しています」…住まいを追われた「賃貸暮らし」独居老人の実態【CFPの警告】
「家賃だけで赤字」74歳女性の切実事情
東京23区内で暮らすアケミさん(仮名・74歳)。子どもは結婚を機に家を出ており、数年前に夫を亡くして以降は2LDKの賃貸に一人で住んでいます。
アケミさんの収入は、月13万円の年金のみ。貯金は約2,000万円ありますが、決して余裕のある生活ではありません。
というのも、月15万円の家賃が大きな負担となっているのです。
夫が生きていたころは、夫婦で月約23万円の年金収入に加えて、夫の労働収入が月8万円ほどあったため、多少家賃が高くても生活は成り立っていました。ところが、夫の死後は家賃だけで月2万円の赤字に。現在は貯金を取り崩す日々です。
しかし、賃貸とはいえ、家族との思い出が詰まった現在の家には愛着があります。また、近所には顔なじみも多く、夫を亡くして一人暮らしのアケミさんにとって、いまから別の地域で新しい生活を始めることは現実的ではありませんでした。
担当者が語る残酷な事実
そんなある日、自宅に管理会社から1通の手紙が届きます。
家賃値上げのお願いについて
(中略)物価上昇に伴う相場変動により、周辺相場の賃料等も参考にしたうえで、次回更新時より下記のとおり改定したく存じます。
改定前:15万円
改定後:19万円
この内容どおりであれば、月4万円の値上げです。いくら貯蓄があるとはいえ、19万円の家賃を払い続けるのは現実的ではありません。
熟考の末、アケミさんは引っ越すことにしました。
しかし、新たな住まい探しは想像以上に厳しいものでした。不動産会社へ相談しても、担当者からなかなかいい返事がもらえません。申し込んでも、審査落ちが続きます。理由を尋ねると、不動産会社の担当者は困ったようにこう言いました。
「高齢の一人暮らしの場合、トラブルを不安視する貸主さまも少なくないようで……。アケミさまの場合、収入が『年金だけ』というのも不安材料としてみられてしまうのかもしれません」
「家賃に加えて、高齢者というだけで借りられないなんて。夫が生きているうちに、もっと早く動いていれば……後悔しています」
アケミさんは、家賃高騰と入居審査の二重苦に、途方に暮れてしまいました。
