(※写真はイメージです/PIXTA)
「金を残してやる気は一切ない」71歳父の揺るぎない覚悟
ヒロシさんのように「財産を残さない」という決断は、一見すると親の身勝手な振る舞いに見えるかもしれません。しかし、ヒロシさんに迷いはありません。
「子どもたちには自力で生きていく力をつけさせました。だからこそ、私が残りの人生を節約してまで、金を残してやる気は一切ありません」
お金は自分の人生を味わい尽くすためにある。リュック一つで世界を飛び回り、残りの人生を余すことなく謳歌するヒロシさんの姿は、資産に縛られない「老後の生き方」を私たちに教えてくれます。
富裕層ほど「お金を使えない」ジレンマ…これからのシニアの“生き方”
内閣府の「年代別 金融資産保有残高について」という資料によると、日本の個人金融資産約1,700兆円のうち、約6割(約1,000兆円)を60代以上のシニア層が保有しています。しかし、その莫大なお金が「生きたお金」として世の中の消費に回っているかというと、必ずしもそうではありません。
内閣府の「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」において、シニア層に「将来的な財産の使い道」を尋ねたところ、全体では「遺族等へ財産を残したい(35.9%)」と「財産は自分のために使いたい(33.0%)」がほぼ拮抗しています。
しかし、これを保有する「金融資産額別」に見ると景色が一変します。金融資産が「1,000万〜2,000万円未満」の層では「遺族に残したい」と答えた人が42.4%ですが、「5,000万円以上」の富裕層になると、64.6%もの人が「遺族に残したい」と回答しているのです。
つまり、資産を持てば持つほど不動産などの容易に現金化できない実物資産の割合が増える事情もあるにせよ、結果的に「自分のために有意義に使う」のではなく、そのまま抱え込んで次世代へ残す道を選びがちな傾向がデータからも浮き彫りになっています。
さらに、親が亡くなるころには子もすでに50代や60代になっている「老老相続」の問題もあります。シニアからシニアへと相続された財産は、再び老後資金として貯蓄に回ってしまい経済が停滞しがちです。また、親の潤沢な資産を無条件で与えれば、子の自立心を奪ってしまうというヒロシさんの懸念にも頷けます。
8,000万円もの資産がありながら「遺族に残す」という富裕シニアの多数派に同調せず、子の自立を厳しく促し、余剰資金を自身の生きがいである海外旅行(同調査において「趣味やレジャーの費用にお金を使いたい」人は32.4%)に注ぎ込むというヒロシさんの決断。
それは一見ドライに見えますが、偏在した日本の資産を社会に還流させ、次世代の真の自立を促すという意味で、これからのシニアの「お金の使い方のロールモデル」を示しているといえそうです。
内閣府「年代別 金融資産保有残高について」
内閣府「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」
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