「親が資産家なら安心」そう思っている人は少なくありません。しかし、その資産が“株式や有価証券”だった場合、話は別です。特に高齢者が短期売買を繰り返すデイトレードにのめり込んでいた場合、相続人は思わぬリスクを背負うことがあります。父が遺した約4億円の証券資産。けれど、それは家族にとって“お宝”ではなく、“呪い”にもなりかねないものだった――。FPの小川洋平氏が詳しく解説します。
「これじゃ、呪いだよ」…評価額約4億円を遺し、78歳で急死した“デイトレ親父”。巨額資産に喜びも束の間…50歳息子が直面した「とんでもない事態」【CFPが解説】
「これじゃ呪いだ」…最終的に手元に残った金額
不安になった健一さんは税理士に相談し、試算してもらいました。義男さんの遺産総額は約4億円。母には「配偶者の税額軽減」が適用され、法定相続分にあたる約2億円までは相続税がかからない見込みでした。一方、残る約2億円相当の金融資産を相続する予定だった健一さんと妹には、合計で約5,000万円の相続税が発生すると説明されます。
つまり、健一さんと妹には、それぞれ約2,500万円ずつの納税負担が発生する計算でした。しかも、現金で10ヵ月以内に納税しなければなりません。
ところが、家族は誰も株式投資の経験がありませんでした。さらに、株式を相続するには、相続人それぞれが証券口座を開設しなければならず、手続きも煩雑です。
「どの株を誰が引き継ぐのか」
「売るべきなのか、持ち続けるべきなのか」
話し合いはなかなかまとまりません。気づけば四十九日も過ぎ、期限は刻一刻と迫っていました。
その間にも株価は変動します。値上がりする銘柄もありましたが、大半は大きく下落。特に、義男さんが好んでいたのはデイトレードを目的とした商品で、中には相場の下落で価格が上がるような商品もあり、長期保有には向かないものばかり。相場環境の悪化も重なりました。
結局、時間に追われるように相続手続きを進めることになり、十分な検討もできないまま売却することに。子ども側に権利があった約2億円相当の資産は、最終的に7,000万円程度まで急減してしまったのです。
結果として、そこから約5,000万円の相続税を支払うことになり、兄妹の手元に残ったのは合計で約2,000万円ほど。健一さん個人が手にしたのは約1,000万円になったのでした。
「下手したら、マイナスだったかもしれないな……」
妹と苦笑いしながら、健一さんはこう呟きました。
「親父は家族のために資産を残したつもりだったんだろう。でも実際に遺されたのは、終わりの見えない手続き、それと税金、暴落だった。――これじゃ、まるで呪いだよ」
