「これじゃ呪いだ」…最終的に手元に残った金額

不安になった健一さんは税理士に相談し、試算してもらいました。義男さんの遺産総額は約4億円。母には「配偶者の税額軽減」が適用され、法定相続分にあたる約2億円までは相続税がかからない見込みでした。一方、残る約2億円相当の金融資産を相続する予定だった健一さんと妹には、合計で約5,000万円の相続税が発生すると説明されます。

つまり、健一さんと妹には、それぞれ約2,500万円ずつの納税負担が発生する計算でした。しかも、現金で10ヵ月以内に納税しなければなりません。

ところが、家族は誰も株式投資の経験がありませんでした。さらに、株式を相続するには、相続人それぞれが証券口座を開設しなければならず、手続きも煩雑です。

「どの株を誰が引き継ぐのか」
「売るべきなのか、持ち続けるべきなのか」

話し合いはなかなかまとまりません。気づけば四十九日も過ぎ、期限は刻一刻と迫っていました。

その間にも株価は変動します。値上がりする銘柄もありましたが、大半は大きく下落。特に、義男さんが好んでいたのはデイトレードを目的とした商品で、中には相場の下落で価格が上がるような商品もあり、長期保有には向かないものばかり。相場環境の悪化も重なりました。

結局、時間に追われるように相続手続きを進めることになり、十分な検討もできないまま売却することに。子ども側に権利があった約2億円相当の資産は、最終的に7,000万円程度まで急減してしまったのです。

結果として、そこから約5,000万円の相続税を支払うことになり、兄妹の手元に残ったのは合計で約2,000万円ほど。健一さん個人が手にしたのは約1,000万円になったのでした。

「下手したら、マイナスだったかもしれないな……」

妹と苦笑いしながら、健一さんはこう呟きました。

「親父は家族のために資産を残したつもりだったんだろう。でも実際に遺されたのは、終わりの見えない手続き、それと税金、暴落だった。――これじゃ、まるで呪いだよ」

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