【FPからのアドバイス】夫婦関係が複雑なときこそ、生前の対話と備えを

今回のケースを通じて、似たような状況にある方へ、FPとしていくつかお伝えしたいことがあります。

1.別居が長期化している場合、遺族年金の受給は「自動的」ではない

戸籍上の妻であっても、長期別居・音信不通の状態では、遺族年金が内縁の妻に認定されるリスクがあります。「籍が入っているから大丈夫」と思い込まず、夫婦関係の実態が遺族年金の認定に影響することを知っておきましょう。

2.夫婦関係が破綻しているなら、離婚と財産分与を正式に

別居状態が続いている場合、離婚と財産分与を正式に行うことで、受け取るべき財産を確実に確保できます。曖昧な状態を続けることは、どちらにとってもリスクになります。弘さんが生前に敦子さんと正式に離婚し、財産分与を済ませていれば、双方にとってより明確な道筋が生まれていたはずです。

3.内縁関係にあるパートナーへの備えは遺言書で

離婚が難しい場合、弘さんが真美さんの老後を守るためには公正証書遺言による遺贈が最も確実な方法でした。たとえば、「預貯金を真美に遺贈する」と明記しておけば、真美さんはまとまった老後資金を確保できました。その場合、法定相続人の遺留分に配慮した内容にする必要があります。また、敦子さんを受取人に指定した生命保険に加入し、まとまった資金を残すこともトラブルを避けるために有効な対策といえます。

放置が生んだ「皮肉な痛み分け」

遺族年金を手にした真美さんは、自身の老齢年金を合わせ、なんとか老後生活の見通しが立ったようです。一方の敦子さんは自宅と預貯金を相続し、老後の生活の目途を立てました。自分の年金と相続した預貯金で、なんとかなりそうです。

結果的には丸く納まったこのケース。しかし、こんな見方もできます。

弘さんの現役時代の年収が700万円程度だった場合、敦子さんが受け取れた遺族厚生年金は月10万円前後(概算)。20年間受給できたとすると、その総額は2,400万円近く。失われた金額はかなりの大きさです。

ただ、もしも正式な遺言を残す時間が夫にあったなら、相続面でも敦子さんは不利になっていた可能性があります。一方で、真美さんから見ると、もし弘さんがしっかりと遺言を残してくれていたら、より多くの遺産を受け取れた可能性があるわけです。

「なぜ、なにも決めておいてくれなかったのか」

二人の女性は同じ問いを抱えましたが、弘さんの放置が、結果的に本妻である敦子さんの住まいと資産を守り、内縁の妻である真美さんの老後を遺族年金で繋ぎ止めるという、皮肉な「痛み分け」を成立させたのでした。

相続財産の内容や年金額、遺言の有無によっては、どちらか一方の生活が大きく揺らいでいた可能性も十分にあります。だからこそ、関係を曖昧なまま放置せず、生前のうちに財産や老後生活について整理し、必要な手続きを進めておくことが重要なのです。

松田聡子
CFP®

【注目のセミナー情報】​​​

【短期償却】5月20日(水)オンライン開催
《所得税対策×レバレッジ投資》
インフラ活用で節税利益を2倍にする方法

【資産運用】5月23日(土)オンライン開催
《想定利回り16%×減価償却》
沖縄・宮古島の観光特需を取り込む「シェアカー投資」