夫と別居して15年。戸籍上の妻という地位を守り抜けば、老後は安泰だと思っていた女性。しかし、夫の死をきっかけに「まさかの事態」に陥ります。法律上の妻であるにも関わらず、遺族年金を受け取れない――。「重婚的内縁」という複雑な状況が生むリスクと、泥沼化を避けるための対策を、CFPの松田聡子氏が解説します。 (事例の登場人物はすべて仮名です)
(※写真はイメージです/PIXTA)
「私が正式な妻なのよ、酷いじゃない」…受け取れるはずの“遺族年金月10万円”が「内縁の妻」へ。老後のため離婚を拒否し続けた70歳女性が崩れ落ちたワケ【CFPの助言】
「遺族年金」は内縁関係でも対象の可能性…「相続」との決定的な違い
真美さんと弘さんのように、内縁関係にある夫婦の一方または双方に法律上の婚姻関係にある配偶者がいる状態を「重婚的内縁」といいます。
重婚的内縁の配偶者が死亡した場合、遺族厚生年金は戸籍上の配偶者が優先されるのが原則です。しかし、戸籍上の婚姻関係が「実体を全く失っている」と認定された場合には、内縁の妻が受給できる場合があります。
具体的には、以下のすべてを満たしている必要があります。
・別居中であること
・生活費などの経済的援助がないこと
・反復する音信・訪問がないこと
この3つがそろい、法律婚が形骸化していると判断された場合、重婚的内縁の配偶者が遺族年金を受給できます。弘さんと敦子さんのケースでは、15年間の別居・送金なし・音信不通という事実が決め手になりました。
「籍さえ入っていれば遺族年金を受け取れる」という敦子さんの思い込みは、裏切られる結果となったのです。ただし、遺族年金の認定は個別の事情を総合的に勘案して行われます。受給できる見込みがあるかどうかは事前に専門家(社会保険労務士など)へ相談したほうがよいでしょう。
一方、相続については法律婚が守られます。内縁の妻には相続の権利がなく、遺言がなければ遺産は法定相続人のものになります。弘さんの預貯金を相続できるのは、敦子さんと2人の子どもたちです。
敦子さんが離婚に応じてこなかったのは、戸籍上の妻という立場を手放すことへの現実的な不安があったからであり、それは責められることではありません。ただし、重婚的内縁の状態を続けるのであれば、法律上の妻と内縁の妻の双方の老後生活が立ち行くように考えておく必要がありました。
