右肩上がりだった平均所得も後退…“若い町”特有のリスクも

もっとも、このモデルは万能ではない。

2024年まで右肩上がりで伸びてきた平均所得(約531万円・全国23位)は、2025年には約484万円、35位へとやや後退した。依然として上位圏にはあるものの、住民の多くが依拠する企業業績の影響を受けやすい構造であることが、こうした変動からも読み取れる。

また、若いまちである以上、いずれ高齢化は進む。現在は子育て世代の流入によって人口構造が維持されているが、この世代がそのまま定住すれば持続する、という単純な構図ではない。

ライフステージの変化に伴う住み替えや、世帯所得のピークアウトといった要因により、構造は徐々に変質する可能性がある。

現在の高所得水準は「働き盛り世代の厚み」に依存したモデルであり、長久手はいま、成長人口モデルから成熟モデルへの移行局面に入りつつあると捉えるべきだろう。

「なにを売るか」ではなく「誰に住んでもらうか」

それでも、長久手が我々に教えてくれるメッセージは明確だ。地域が豊かになるために、必ずしも特産品や観光資源は必要ではない。重要なのは、「なにを売るか」ではなく「誰に住んでもらうか」だ。

長久手は、「若い」「働く」「子育てする」という層を継続的に呼び込み、町の所得水準を押し上げてきた。派手さはないが、構造は極めて合理的だ。

長久手は、日本の多くの自治体にとって現実的なヒントを提示している。人口戦略こそが最大の経済戦略であるという事実を、このまちは静かに証明しているのである。

鈴木 健二郎
株式会社テックコンシリエ 代表取締役
知財ビジネスプロデューサー

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