長久手市民の平均所得が高いワケ

長久手の最大の特徴は、人口構造にある。平均年齢は約40歳と全国でもトップクラスに若く、高齢化率も低い。言い換えれば、この町は「働いている人」が圧倒的に多い。所得ランキングは納税者ベースの平均値であるため、現役世代の割合が高いほど有利になる。

さらに重要なのは、その“働いている人”の質だ。

長久手は名古屋市中心部と豊田市の中間に位置し、いわゆる「トヨタ経済圏」に組み込まれている。自動車関連企業、製造業、IT、研究職など、比較的給与水準の高い職種に従事する住民が多い。

加えて、共働き世帯の比率が高い。つまり、「高収入の個人×2人」という構造が、町全体の平均所得を底上げしているのだ。

地元のカフェで話を聞くと、こんな声が返ってきた。

「平日の昼間でも、パソコンを開いて仕事している人が多いですよ。ご夫婦で在宅勤務しているケースも珍しくないです」

別の子育て世帯の母親はこう話す。

「夫は名古屋、私はリモートで東京の会社の仕事をしています。長久手は子育てしやすいし、働きやすいんです」

ここには、従来の郊外住宅地とは違う風景がある。通勤だけでなく、働く場所そのものが分散している。これが長久手の新しさだ。

万博で生まれ変わった「住みやすい長久手」

長久手のもう一つの特徴は、その都市の成り立ちにある。

2005年の愛知万博をきっかけに、長久手では大規模な区画整理と都市開発が進んだ。道路、公園、住宅地、商業施設が一体的に整備され、「最初から住みやすく設計された町」として生まれ変わった。

さらに、愛知県立大学をはじめとする大学や医療機関も集積し、教育・子育て環境が整っている。

つまり、長久手は偶然発展したのではなく、「働く家族を呼び込むこと」を明確に意図してつくられた都市なのだ。

この点は、歴史的に形成された京都や鎌倉のような土地とは決定的に異なるといってよいだろう。

従来の「高所得自治体」との明確な違い

長久手の構造は、これまでの高所得自治体とは明確に異なる。

・猿払村・安平町:特定産業による高所得者が平均を押し上げるモデル

・葉山・鎌倉:ブランド住宅地として高所得者が定住するモデル

・長久手:人口構造そのものが所得を生むモデル

特別な産業がなくても、「若さ」「共働き」「高賃金職種」の3条件が揃えば、町の平均所得は自然と高くなる。長久手はそれを体現しているのである。