不動産の原状回復をめぐるトラブルは後を絶ちません。特に費用負担について、どこからどこまでが借主・貸主側の責任なのか、互いの主観が入るため、どうしても揉めやすいようです。そこで今回、大家と揉める59歳男性の事例をもとに、原状回復をめぐるトラブルの回避策と考え方のポイントをみていきましょう。
原状回復費80万円!?…月給40万円の59歳男性、10年住んだ部屋を退去→後日、大家から届いた“一通の茶封筒”に悲鳴【弁護士が「退去費用をめぐるトラブル対策」を助言】
弁護士の見解
本件のような退去時の原状回復費用をめぐるトラブルは、実務上、非常に多い相談事例です。結論からいえば、「10年居住=全面張替え費用を借主が負担する」という考え方は、ガイドライン上妥当ではありません。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、通常損耗や経年劣化は貸主負担とされており、借主が負担すべきなのは、故意・過失や通常の使用を超える損耗に限られます。
特にクロスや床材については、耐用年数の考え方が示されており、長期間の居住後に新品同様の費用を全額請求することは、原則として認められません。
また、「次の入居者のために新しくしたい」という事情は、貸主側の都合に過ぎず、その費用を当然に借主へ転嫁できるものではありません。
契約書に原状回復義務の記載があったとしても、その内容がガイドラインや判例の考え方に反する場合、直ちに全額負担が認められるわけではないことを覚えておきましょう。
もっとも、賃借人側も「経年劣化」や「大家負担」を主張しすぎて平行線となり、双方が決着をつけられず、かえって紛争が激化してしまうケースもあります。
重要なのは、見積の内訳を精査し、「経年劣化か、借主負担か」を合理的に整理していくことです。
お互いに、感情的には「1円でも自分に有利に」と感じる場面でも、法的に支払うべき部分とそうでない部分を整理し、ある程度相互に尊重しながら譲歩し合うことが、適切かつ早期の紛争解決に資するといえるでしょう。
山村暢彦
弁護士法人山村法律事務所
代表弁護士
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