この遺言書、絶対におかしい

「お父さんが、こんな一方的な内容を書くはずがない」

都内で契約社員として働く独身のサオリさん(仮名/55歳)。年収は約400万円、23区内の1DK(賃貸)で一人暮らしをしています。

そんな彼女は、実父の遺産を巡る兄との確執に頭を悩ませていました。

きっかけは、父の葬儀を終えた夜、実家で同居していた兄のタカシさん(仮名/58歳)から手渡された「一枚の紙」でした。

サオリさんの父は生前、実家で兄夫婦と暮らしていましたが、晩年は病院で過ごしていました。サオリさんが父のお見舞いに病院へ行った際、「家はタカシに渡すが、現金はサオリの物だからな」と優しく声をかけてくれていたそうです。

「父の言葉を信じていました。兄も『介護は任せろ』と言ってくれていたので、安心していたんです。でも、父が亡くなった途端、兄の態度が豹変しました」

葬儀の夜、兄が仰々しく差し出してきたのは、パソコンで作成したとみられる「遺言書」でした。そこには信じられない一文が並んでいました。

「遺産はすべて長男・タカシに相続させる」

サオリさんの頭の中が真っ白になりました。しかし、悲しみ以上に、ある″強烈な違和感”が彼女を襲います。

「父は生涯、アナログ人間で、無理やり持たせたスマホもほとんど使っていませんでした。そんな父が、わざわざパソコンで遺言書を作成するなんて、到底考えられません」

さらに、記載された日付を見て確信に変わります。その時期、父は認知機能が著しく低下し、施設に入居していたはずなのです。

「こんな時期に、父がパソコンを使って遺言書を作るわけがない。絶対に、兄が勝手に作ったんだと思いました」

サオリさんが「これ、本当にお父さんが作ったの?」と問い詰めると、兄は視線を泳がせ、歯切れの悪い返答を繰り返します。

あげく「文句があるならもう帰れ! 俺がどれだけ苦労したと思っているんだ!」と声を荒らげ、部屋を出て行ったというのです。

「介護を盾にして、父の意思を捏造したのではないか」

疑惑は怒りへと変わり、サオリさんは現在、弁護士のもとを訪れ「遺言書の無効」を訴える準備を進めています。