相続について、元気なうちは他人事で深く考えない人も多いでしょう。しかし、突然の病気や事故はいつ起こるかわかりません。特に、子のいない夫婦は事前に対策をしていないと、相続トラブルに発展するケースが後を絶たないようです。夫が急逝した53歳女性の事例をもとに、子のいない夫婦特有の相続リスクと、元気なうちに考えておきたい「生前対策」のポイントをみていきましょう。
本当の父のように慕っていたのに…夫の死後、優しかった義父から一本の電話→53歳妻が絶句した「電話の本当の目的」【CFPが「子のいない夫婦」の相続リスクを解説】
「遺言書があるから大丈夫」の落とし穴
子のいない夫婦の場合、法律上の相続人は「配偶者と故人の親」になります。今回の場合、ナルミさんと義父母が相続人です。なお、法定相続分は配偶者が3分の2、親が3分の1です。
「夫婦で一緒に築いた財産は夫婦のもの」という感覚は自然ですが、離婚時の「財産分与」とは異なり、相続では「名義が誰か」が重要です。夫名義であれば預金も自宅も「夫の財産」として扱われ、子がいなければ親にも相続する権利が発生します。
また、トラブルを避けるために「遺言書があれば安心だろう」と考える人も多いです。しかし、遺言書は万能ではありません。
兄弟姉妹を除く法定相続人には「遺留分」という最低限の取り分があり、法定相続分の2分の1(遺産全体の6分の1)を受け取れる権利があります。
たとえ遺言書に「全財産を妻に」と書かれていても、親が「遺留分侵害額請求」を行えば、原則として現金で支払わなければなりません。
遺留分請求への対応策
たとえば、資産の大半が自宅のケースでは、義父母から相続分を主張されたものの手元に現金がなく、その結果、自宅の売却を強いられたという話もあります。
そこで役立つのが「生命保険」です。
死亡保険金は受取人固有の財産となるため、夫が「受取人を妻」とした生命保険に加入していれば、妻は自宅を守りながら、保険金を代償金の支払いに充てることができるでしょう。
また、遺言書には実務上の問題もあります。銀行口座の解約や不動産の名義変更には、相続人全員の協力が必要になる場面があります。このとき、遺言書の内容に納得できない義父母が「判を押してくれない」となると、手続きが長期間止まってしまうのです。
こうした事態を防ぐためには、「遺言執行者」を指定しておく方法が有効でしょう。遺言執行者には単独で預金解約などの手続きを進める権限があります。弁護士などの専門家を指定しておけば、配偶者が義父母と直接交渉する精神的な負担を減らし、手続きをスムーズに進めることが可能です。