年金月18万円だが、「持ち家」で暮らせない現実

母親にも事情がありました。現在73歳。5歳年上の夫を3年前に亡くし、一人暮らしを続けてきました。年金は月18万円ほど。決して少なくはありませんが、持ち家に一人で住み続けることには、さまざまな困難があったのです。

母親が住んでいたのは人口減少がじわじわと進む地方都市の郊外。ひざが悪くなり、運転ができなくなったことも生活に大きく影響していました。近くのスーパーは車で15分のところにあり、徒歩で通うのは難しく、宅配サービスを利用していました。病院も遠く、リハビリ通院にはタクシーが必要です。タクシーを使えば往復で数千円の出費。週に数回通うだけで、年金が大きく減る感覚がありました。

在宅介護サービスも利用していましたが、ヘルパーが不足しており、担当者との相性が合わなくても変えることができません。我慢して利用を続けるか、サービス自体を諦めるか。半ば諦めながらも不満を抱えていたのです。

そして、とどめとなったのが家の修繕費でした。天井から雨漏りしているのに気づき、業者に見積もりを取ったところ、修繕が必要な箇所が次々とみつかりました。雨漏りに水回りや外壁。築30年を超える家は、あちこちにガタが来ていたのです。修繕には300万円程度かかるといわれました。手元には預貯金が1,000万円ほどありましたが、修繕したとしても、この先この家で本当に暮らし続けられるのか。さらに修繕が必要になったら。医療や介護の費用が増えたら。さまざまな不安が募りました。

一瞬、息子に相談することも頭をよぎりましたが、父親の葬儀以来、連絡はありません。

「相談したところで、どうなるだろうか。迷惑をかけてはいけない。あとから伝えることにしよう」

友人や親戚にも相談しながら悩んだ末、元気なうちに家を売却することに。幸い、住んでいた地域はまだ買い手がつく場所でした。「動くなら、いましかない」と、家を売却。約900万円で売却し、預貯金と合わせて約1,900万円を確保できたのです。この資金を元手に、医療や介護のサポートが受けられる有料老人ホームへの入居を決めました。

施設に移って数ヵ月。Bさんは、医療や介護のサポートを身近に受けられ、タクシー代や修繕費用を気にすることのない日々を送っています。一人で住んでいたときよりも、明るい表情で暮らせています。