その場にいた長男と母の反応

この言葉を聞いた長男コウイチさんと母チエさんはひどくショックを受け、「なんてこと言うんだ」とケイコさんを説教。

するとケイコさんは、「なによ、私が悪いっていうの!? 冗談じゃない!」と逆上し、それ以来、母の様子を見に来ることはありませんでした。

娘の態度に辟易したチエさんは、長男のコウイチさんに相続について相談。「ケイコには1円も遺したくない」と告げたのです。

金に執着する性格のケイコさんは、15年前に父が他界したときも、ケイコさんは自分にも遺産を分けろと主張。しかし、そのときはコウイチさんの説得により、いったん母であるチエさん(仮名)が配偶者の税額の軽減(※)や小規模宅地等の特例を使ってすべて相続しました。ケイコさんは、「いずれ母が亡くなれば自分にも遺産が入る」と考えたため、当時は渋々納得したそうです。

(※)法定相続分相当額、または1億6,000万円までの多い金額

「甘やかしすぎた私たちも悪いけれど、あの子には自分を省みてもらわないといけない……」

“争いのタネ”を小さくする「生前対策」

チエさんが亡くなった場合、相続人は長男コウイチさん、次男ショウジさん、長女ケイコさんの3人です。

遺言書などがないまま相続が発生し、遺産分割協議がまとまらなければ、各人の取り分は法定相続分である3分の1ずつとなります。当然、ケイコさんも自分の取り分を主張してくるでしょう。

今回のようにチエさんが「ケイコさんには遺産を渡したくない」と考えているのであれば、遺言書を作成しておくと安心です。

ただし、仮に「ケイコさんにはいっさい遺産を渡さない」と記したとしても、ケイコさんには遺留分を請求する権利があります。そのため、「1円も渡さない」というのは現実的には難しいでしょう。

また、遺産の内訳が現金より不動産の割合が大きい場合、「相続税」を支払うための現金をどう確保するかも重要な課題です。「土地は相続したものの、相続税を払えずに結局売却した」というような話を耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。

遺留分を請求されたものの現金がなく不動産しかない場合や、土地を相続したものの相続税が払えないといった心配がある場合には、「生命保険」の活用も有効な手段です。生命保険金は受取人固有の財産となり、受取人が自由に使うことができるため、遺留分の支払いや相続税の納税資金として利用できます。

さらに、受取人が法定相続人であれば、相続税を算出する際に生命保険の非課税枠(500万円×相続人の数)も適用されるためおすすめです。