高齢化が進み、家族による介護の負担は年々重くなっています。こうしたなか、介護離職による収入減や社会とのつながりの希薄化が原因で、経済的・精神的に追い込まれるケースも少なくありません。79歳母のために退職を選んだ55歳男性の事例から、介護離職のリスクと「家族と距離を保つ重要性」についてみていきましょう。
(※写真はイメージです/PIXTA)
ごめん、おれ働くよ…年金12万円の79歳母と同居する55歳無職男性「実家から車で10分のアパート」で一人暮らしをはじめた理由【CFPの助言】
カズヒロさんの決断
介護疲れが限界を迎えつつあったある日、カズヒロさんは久しぶりに旧友と会う機会がありました。友人は介護職として働いています。
近況を打ち明けると、友人はこう言いました。
「ひとりで抱え込みすぎじゃないか。いまの状況はお前にとっても母親にとっても良くないと思う。まずは地域包括支援センターに相談してみたらどうだ」
友人の言葉に背中を押されたカズヒロさんは、地域包括支援センターを訪れます。そこで、介護保険サービスの利用状況や見守り体制、通院の動線などを一つひとつ見直しました。
そして話を重ねるうちに「同居を続けることだけが正解ではない」ということに気づいたのです。
悩んだ末、カズヒロさんは別居を決意します。実家から車で約10分の場所にあるアパートを借り、一人暮らしをはじめました。同時に、訪問介護やデイサービスの利用回数を増やし、外部の力を積極的に取り入れます。
すると、不思議なことに気持ちに余裕が生まれました。母と会う時間は減ったものの、一緒に過ごす時間の質はむしろ高まったといいます。
「ごめん、おれ働くよ」
そう母に伝え、カズヒロさんは再び仕事をはじめました。収入を確保できたことで、金銭面の不安も和らいでいったとのこと。
現在は一定の距離を保ちながら母を支える生活ができており、母に強くあたるようなこともないそうです。
介護は、近くにいることだけが正解ではありません。続けられる形を選ぶことが、結果として家族を守ることにつながります。
辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表/CFP