高齢化が進み、家族による介護の負担は年々重くなっています。こうしたなか、介護離職による収入減や社会とのつながりの希薄化が原因で、経済的・精神的に追い込まれるケースも少なくありません。79歳母のために退職を選んだ55歳男性の事例から、介護離職のリスクと「家族と距離を保つ重要性」についてみていきましょう。
ごめん、おれ働くよ…年金12万円の79歳母と同居する55歳無職男性「実家から車で10分のアパート」で一人暮らしをはじめた理由【CFPの助言】
カズヒロさんが抱える「もっとも深刻な問題」
問題は精神面だけではありません。頼れる収入は母の年金月12万円のみ。母の貯金は100万円。カズヒロさん自身は退職金と貯蓄を合わせて1,000万円ありましたが、収入はゼロです。
実家暮らしで家賃はかからないものの、光熱費や食費、医療費、介護サービスの自己負担分、紙おむつ代などが重なります。足りない分は自身の貯蓄から補いました。
「このままでは自分の老後資金が足りなくなるのではないか」
母を思う気持ちとは裏腹に、将来への不安が膨らんでいきます。精神的にも金銭的にも余裕は微塵も残っていませんでした。
介護離職が招く“最悪の事態”
厚生労働省の調査によると、2024(令和6)年度における養護者による高齢者虐待の相談・通報件数は4万1,814件にのぼっており、件数は年々増加傾向にあります。
※高齢者の世話をしている家族、親族、同居人等 参照:厚生労働省 令和6年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果
「自分は大丈夫」と思っていても、介護疲れが積み重なり、感情を抑えきれなくなるケースは少なくありません。追い込まれた結果、思わぬ言動が虐待に発展してしまうこともあります。
だからこそ、介護は一人で抱え込まないことが重要です。肉体的にも精神的にも負担を軽減する工夫や制度の活用が欠かせません。
具体的には、次のような選択肢があります。
・訪問介護やデイサービスなど、外部サービスを組み合わせる
・家族やケアマネージャー、地域包括支援センターに早めに相談する
・一定の距離を保てるよう、住環境を見直す(別居や近居の検討を含む)
・必要に応じて、介護施設への入居を検討する
必ずしも同居を続けることだけが正解ではありません。一定の距離を保ちながら支える形に切り替えることで、双方にとって安定した関係を築ける場合もあります。
これらの制度や選択肢を上手に活用することで、自身の生活を守りながら介護を続けることは可能です。介護は「頑張り続けること」ではなく「続けられる形を探すこと」が大切です。