(※写真はイメージです/PIXTA)
父の葬儀の裏で起きていたこと
都内の葬儀場で父を見送った田中徹さん(52・仮名)は、式が終わった直後、控室の空気を忘れられないと語ります。
「最後の挨拶が終わって、ホッとしたんです。でも、問題はそこからでした」
父の入院中、主に動いていたのは徹さんでした。医師との面談、施設との連絡、葬儀社の選定、見積もりの確認――。妹の佐藤由美さん(48・仮名)は遠方に住んでいるため、ほぼすべてを徹さんに任せる形になっていたそうです。「任せていい?」「分かった、やっておくよ」と、当初のやり取りは簡潔なものでした。
通夜の準備中、葬儀費用の話が出ます。徹さんが考えていたのは、約120万円の一般的な葬儀プランでした。打ち合わせは平日の昼間、徹さん一人で行われました。具体的な内容を決める段階に入ると、基本プランを土台に細かな調整の提案が続きます。
祭壇の装花は、プランのままだと簡素に見える可能性があると説明されました。差額は十数万円。徹さんは大きな変更ではないと判断し、了承しました。通夜料理は参列者数が読みづらいとして、やや余裕を持たせた数量を勧められます。返礼品の単価も平均的な水準を提示されました。写真パネルのサイズや会葬礼状の仕様、控室の飲み物なども同様です。
徹さんは「どれも必要な調整に聞こえた」と振り返ります。打ち合わせが終わるころ、総額は当初想定より大きく上がっていました。最終見積もりは約180万円。徹さんは変更の都度、由美さんに資料を送っていましたが、式当日に費用の話題になった際、彼女は増額の経緯を十分に理解していませんでした。
「そんなにかかるって聞いてない」
「見積もり送ったよ」
「ちゃんと説明してほしかった」
徹さんはスマートフォンを開き、送信履歴を見せます。既読は付いていました。
「見たけど、決まったとは思ってなかった」
その言葉で、徹さんの中に溜まっていた感情が一気にあふれ出したといいます。
「任せるって言ったよね。全部一人で決めたわけじゃない」
「でも相談が足りない」
次第にお互いの声が大きくなっていく二人。親族が間に入り、その場はいったん収まりますが、微妙な空気が流れたまま葬儀は終了しました。きょうだいの間に生じたしこりは、今も消えないままです。
「無責任ですよ、何もしていないのに文句ばかり言って……本当に許せません」