配偶者とは死別によって関係が終わっているのに、のこされた配偶者が「姻族関係終了届」を役所に出す死後離婚。亡くなってなお「離婚」を選択するのはなぜなのか……朝日新聞取材班の著書『ルポ 熟年離婚』(朝日新聞出版)より、死後離婚が増えている背景とその選択に潜む注意点を、事例を交えて紹介します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
今も胸が痛む…80代男性、10年前に亡くなった妻との「死後離婚」を決意。理由は「同居する義母」の存在【ルポ熟年離婚】
「死後離婚」増加の背景
法務省の戸籍統計によると、2023年度の姻族関係終了届の届け出件数は3,159件。ピークだった17年度の4,895件からいったん減少したが、21年度に2,934件、22年度に3,065件と、じわりと増加傾向に転じている。
ガーディアン法律事務所の園田由佳弁護士によると、死後離婚が増える背景には「結婚観」の変化もあるという。
「家に嫁ぐ」という言葉があるように、かつては結婚するにあたり「家と家」の結びつきが意識されたが、現在では若い世代ほど「個人と個人」の結びつきという感覚に変わっている。
配偶者とは死別によって関係が終わっているのに、義父母から「嫁いできたのだから、これからも色々やって」と迫られると、価値観の違いから死後離婚に踏み切るケースが多いという。
注意点もある。姻族関係終了届を出しても、亡くなった配偶者との子どもは、義父母にとって血族のままだ。「義父母と孫」の関係は続くため、子どもを介してつきあいが継続し、互いの感情がもつれてしまうリスクがある。
また子どもには、亡くなった配偶者に代わって義父母の遺産を相続(代襲相続)する権利も生じる。「死後離婚」によって関係が悪化した親族と、遺産分割協議でもめる可能性も出てくる。
姻族関係終了届は役所に受理されてしまうと、取り消しはきかない。園田弁護士は「届けを出して後悔しないか、慎重に判断してほしい」とアドバイスする。
朝日新聞取材班