「年金分割」の誤解

長年、生計をともにした末の熟年離婚の後に、お互いの年金をどう分け合うか。老後の生活を左右する「年金分割」は、離婚協議や調停で論点になりやすい。複雑な制度には思わぬ「落とし穴」もある。

社会保険労務士で、年金事務所で数多くの相談を受けてきた石渡登志喜(いしわた・としき)さんのもとに数年前、離婚準備中だという女性が訪ねてきた。

女性は、夫側の弁護士に「離婚をするなら、年金を必ず半分に分けなければいけない」と告げられたという。この夫婦は共働き。妻の職業は公務員で、厚生年金に加入していた。夫は自営業で、国民年金に加入していた。このケースで、納めてきた年金は必ず折半しなければならないのか。

石渡さんによると、答えは「ノー」だ。夫側の言うとおりにすると、妻側にとって不利な分割になってしまうという。どういうことか。

必ずしも折半する必要はない

年金分割の対象となるのは厚生年金(厚生年金基金が国に代行して支給する部分を含む)で、「3号分割」と「合意分割」という2つのパターンがある。

「3号分割」は、夫が会社員で妻が専業主婦、といったケースにあてはまり、この場合は夫婦間での合意がなくても、婚姻期間中の厚生年金の納付記録を折半できるルールがある。

共働きでどちらかが厚生年金に加入し、それぞれ年金保険料を納めていた夫婦に適用されるのは「合意分割」で、こちらは合意すれば必ずしも折半しなくて良いルールだ。

この相談者のケースも合意分割の対象で、「必ず半分に」という夫側の主張は誤りだ。

「自分がどのケースにあたるかを理解しておかないと、相手に言いくるめられ、自分が損をする形で分割してしまうおそれがある」と石渡さんは警告する。

朝日新聞取材班