司法統計によると、離婚理由として最も多いのは「性格の不一致」ですが、「金銭トラブル」を理由に離婚へ踏み切るケースも上位に入ります。ただし、見方を変えると、別の理由で離婚を決断できずにいた夫婦が、「金銭」をきっかけに離婚へ踏み切れたケースもあるようです。朝日新聞取材班の著書『ルポ 熟年離婚』(朝日新聞出版)より、50代夫婦の事例とともに、離婚トラブルになりやすい「年金分割」のしくみと合意分割の方法についてみていきましょう。
君が連帯保証人になってくれるか?…10歳の次男に暴言を繰り返す妻と離婚したい→経営者の夫が出した“離婚の切り札”【社労士が「年金分割」の注意点も解説】
バカ、シんじゃえ…10歳の次男に暴言を繰り返す妻
関東に住む建設会社経営の男性(55)は2年前、20年連れ添った妻(50)と離婚した。
異変に気づくきっかけは、長女(16)からの訴えだった。夫妻には3人の子どもがいたが、一番下の小学生の次男(10)が、妻から「バカ」「シんじゃえ」などの暴言を繰り返されているという。
男性は結婚後、会社を経営するようになり、出張で国内外を飛び回っていた。育児は専業主婦の妻に任せきり。このためネグレクト(育児放棄)のような状況に気づくのが遅れた。
「出張が多くなると妻は浮気を疑い、疑心暗鬼になった。放っておいた僕も悪いが、その執拗さにうんざりし、距離をとっていると、次男にあたるようになった」と男性は振り返る。
児童相談所に相談してみたが、妻から次男への暴力はなく、言葉のみの心理的なもので「介入できない」と言われた。
男性の実母と同居して子どもたちの面倒をみてもらおうと提案したが、拒否された。妻との関係を修復しようと試みたが、ギクシャクした関係は解消されず、離婚を提案したが、それも拒否された。
潮目が変わったのは、会社の資金繰りが厳しくなってからだ。
借金の連帯保証人を打診すると、あっさり離婚を承諾
会社の経営状況を妻に説明し、「悪化したら、君が連帯保証人になってくれるか? 自宅も売りたい」と切り出した。妻を試す気持ちもあったという。すると妻は「経済的リスクは負いたくない」と、あっさり離婚届に判を押した。
元妻は子ども3人を連れて自分の実家へ戻り、男性は子どもたちが大学を卒業するまで養育費を払うことになった。夫と離れたことで元妻から次男への虐待はおさまったと聞いた。男性の会社の業績も回復した。
元妻から「よりを戻したい」と言われたが、断った。いい人が現れれば、再婚したいと語る。
金銭問題を理由に離婚する夫婦は多い
司法統計(2023年度)によると、妻側が訴える離婚理由で「生活費を渡さない」など金銭問題は1万2040件にのぼり、上位に位置する。公認心理士、離婚カウンセラーの岡野あつこさんは、子育てなどを経験した熟年夫婦に対しては、離婚が経済的に損か得かをまず冷静に考えることをアドバイスするという。
「経済的なメリットがあれば、婚姻関係を継続する努力をまず、すべきだと勧めますが、マイナスしかなければ、離婚もやむを得ません」と語る。
夫が妻に借金の連帯保証人になることを求めた場合、「ほとんどの妻は離婚を選ぶ」とも指摘する。