ライフスタイルの変化などを受けて価値観が変わり、「共働き夫婦」や「子育ての分担」が当たり前になりつつあります。しかし、夫が外で働き、妻が家庭を守るのが当然とされていた親世代のなかには、その変化についていけない人もいるようです。朝日新聞取材班の著書『ルポ 熟年離婚』(朝日新聞出版)より、義母と夫による「役割の押しつけ」に苦しんだ50代女性の事例を紹介します。
あなたの息子さんは、そんなにできた人ですか?…50代・公務員女性が夫の実家で“のど元まで出かかった言葉”を我慢。義母が口にする「悪気のないお節介」への嫌悪感【ルポ】
「掃除をしに来て」「ご飯を送って」義母に影響され甘える夫に辟易
2人の息子を産み、そのたびに女性は育休をとって仕事に復帰した。夫は単身赴任が多く、仕事と育児の両立のために近くに住む実母を頼った。子どもたちの風邪が実母にうつったときには申し訳なかった。
そんな様子を知ると、義母は言った。
「そんなに大変なら、どうして仕事を辞めないの?」
「息子の給料で食べていけないわけじゃないのに、働く意味あるの?」
「そんなに仕事して、子どもがかわいそう」
ちくちくと胸に刺さり、刻まれていく言葉。最初は受け流していた。
歩み寄れるかもしれないと、母の日や父の日にはプレゼントを送り、夏休みや年末年始には、手土産を持って、子どもと帰省した。でも、そのたびに価値観を押しつけられ、こうあるべきだと諭される。悪気がないから、厄介だった。
夫は長く単身赴任を続けた。子どもの運動会、個人面談、PTA活動。夫が休みをとって行事に参加することはなかった。でも、週末のたび、夫から連絡はあった。
「掃除をしに来てよ」「1週間分のご飯をまとめて送ってくれ」。夫は、自分の母のように家事は妻がやってくれて当然だと思っているようだった。
とてもじゃないけど、忙しすぎて、手が回らない。できることは自分でやって。女性は夫のリクエストにあまり応えられなかった。これじゃ、結婚した意味がない。そんなことを思ったのだろうか。夫から「離婚をしてほしい」と切り出された。
結婚生活は、15年ちょっとだった。
「離婚が決まってほっとした」妻の本音
離婚が決まったとき、養育費をどうするかなど金銭的な不安はあった。だが、やっと、自分に戻れる。自由になれると思った。夫、義理の母、そしてあの家のこと、すべて、私とは関係のないことになる。ほっとした。
息子たちには、父親であることは変わらないのだから、会いたいときに会えばいいよと言ってきた。その彼らも社会人になり、手を離れた。