「子どもに迷惑をかけたくない」「ひとり暮らしが不安になった」「話し相手が欲しい」などの理由から、終の棲家として「老人ホーム」を検討する人が増えています。そこで今回、施設選びの盲点ともいえる、費用や設備、サービス“ではない”注意点をみていきましょう。
お金はあるのにみじめだった…退職金5,000万円・年金月37万円の70代・元公務員夫婦「高級老人ホーム」をわずか半年で退去。45歳長男に明かした“入居者にしかわからない”後悔
あっけなく終わった「高級老人ホーム」での生活
しかし夫婦が入居して半年が経った頃、両親のもとを訪れたナオキさんに、父ヒロシさんが「ここを出ようと思う」と話し始めました。
ナオキさん「えっ!? あんなに楽しそうだったのに、なんで急に……」
退去を検討している理由について、ヒロシさんは次のような点を挙げました。
・高級老人ホームだからか、入居者のなかには元経営者や上場企業の元役員、弁護士など元エリートが多く、話についていけなかった。
・入居者は80代が多く、自分たちが若いからか見下されるような発言が目立つようになった。
・一度言い返したところ、顔が広いボス格の入居者と対立してしまい、ほかの入居者たちとも話しづらくなってしまった。
・今は食堂での食事や大浴場での入浴は止めて、居室で自炊している。お金はあるのにみじめ。こんなところで最期を迎えたくない。
ナオキさんはこの話を聞き、言葉を失います。両親のまさかの現状に、退去を引き止めることはありませんでした。
老人ホームに入退去する理由と年齢層
PwCコンサルティング「高齢者向け住まいにおける運営形態の多様化に関する実態調査研究事業報告書(令和5年度)」によると、夫婦が入居した「住宅型有料老人ホーム」の入居者の年齢は、90歳以上が31.7%、85~89歳が26.6%、80~84歳が17.4%と、80歳以上で75.7%、4分の3を占めています。
夫婦の年齢からも、ホームの入居者からは“若輩者”と扱われたのかもしれません。
また同調査では、ホームの入退去状況も確認できました。まず入居は、病院・診療所からが42.3%、自宅からが26.8%と続きます。一方退去の理由は、死亡による契約終了が53.9%、疾病や介護、認知症などでの転居が一定数あります。
退去する場合、入居一時金はどうなる?
老人福祉法施行規則には「短期解約特例制度(90日ルール)」があります。これは、入居者が施設に適応できなかった場合や健康上の理由で早期に退去せざるを得なくなった場合のリスクを軽減するための制度です。
具体的には、入居日から3ヵ月以内に契約を解除・退去した場合、入居一時金(前払金)から、居室の原状回復費用(クリーニング代など)や退去日までの家賃や利用料、食費などの実費を除いた金額が返還されます。
しかし、夫婦はすでに半年以上入居していたため、90日ルールは適用されません。
![[図表]住宅型有料老人ホーム入退去の状況 出典:PwC コンサルティング(合)「高齢者向け住まいにおける運営形態の多様化に関する実態調査研究事業報告書(令和5年度)」より引用。](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/4/a/540mw/img_4a46e4b21cb8fe5e959c7e258f9286b689829.jpg)