収入が高くても年金額が相応に高くない理由

「これ、間違ってませんか?」

前のめりな姿勢で年金事務所に問い合わせたモトナリさんですが、職員の調査の結果、モトナリさんの年金記録に誤りはないことがわかりました。

モトナリさんのように賃金が高い人ほど見落としがちなのが、厚生年金保険料の基礎となる「標準報酬月額」という仕組みです。

標準報酬月額は現在32段階に区分されており、最上位である32等級は65万円に設定されています。厚生年金保険料は、この標準報酬月額をもとに計算されます。保険料率は18.3%で、労使折半のため、モトナリさんの負担は標準報酬月額65万円の9.15%、つまり5万9,475円が毎月給与から天引きされています。

※ 標準報酬月額の上限は、2027年に68万円、28年に71万円、29年に75万円へ段階的に引き上げられる予定。

つまり、実際の給与がどれほど高くても、標準報酬月額は65万円が上限のため、将来受け取れる年金額にも限界があるのです。モトナリさんが「思っていたより年金が少ない」と感じたのは、この仕組みを知らなかったためでした。現役時代の収入が多い人ほど、年金額とのギャップを大きく感じやすくなります。

ただし、「ねんきん定期便」に記載されている年金見込額は、あくまで60歳まで働いた場合に65歳から受け取れる金額です。60歳以降も厚生年金に加入して働き続ければ、その分年金額を増やすことができます。

「年金についてちゃんと考えたことがなかったので驚きました、いま気づくことができてよかったです。定年まであと15年、妻と協力しながら老後の準備を進めていきます」

モトナリさんは、気持ちを新たにしています。

不明点は早めに問い合わせを 

今回のケースでは、年金記録に誤りはありませんでした。

しかし前述のとおり、年金記録の漏れや誤りは実際に起こり得ます。筆者の伯父も、記録を正しく統合できなかった1人です。おそらく、短期間の転職を繰り返していたことや、名前の読み方が当て字に近かったことが原因だったと推察します。

一度、じっくりとご自身の「ねんきん定期便」を眺めてみてください。そして、少しでも疑問があれば、早めにお近くの年金事務所へ相談することをおすすめします。

山﨑 裕佳子
FP事務所MIRAI
代表