定年を迎えるにあたり、多くの人が直面するのが「退職金をどう受け取るか」という問題です。一時金での受け取りは税制上有利とされる一方、本当にそれが最適な選択とは限りません。定年を間近に控える59歳の会社員Aさんも、銀行員の助言に迷いながら、自身の老後を見つめ直すことになりました。退職金の受け取り方で後悔しないための考え方をみていきましょう。
銀行員「大損ですよ!?」…退職金2,000万円の59歳サラリーマン〈退職所得控除〉〈2分の1課税〉の税制優遇を捨てて「年金形式」での退職金受取を決めたワケ【CFPが解説】
退職金の受け取り方「一括」と「年金形式」の違い
定年が近づくにつれて、退職金の受け取り方について悩む人は多いです。筆者のもとにも、毎年一定数の相談がきます。
退職金を「一時金(一括)」として受け取るか「年金形式」で受け取るか……どちらを選ぶかによって、税金や社会保険料、資金管理のしやすさが大きく異なるため、それぞれのメリット・デメリットを理解しておくことが重要です。
税制面だけで見ると、一般的には退職一時金のほうが有利とされています。
退職金を一時金として受け取る場合は「退職所得控除」を差し引いたうえで、退職金だけを切り離して税額を計算する仕組みです。そのため、給与や年金などの他の所得と合算されず、税負担が抑えられるよう配慮されています。
なお、退職所得控除額は、勤続年数に応じて以下のように決まります。
たとえば、退職金が2,000万円、勤続年数が36年の場合、退職金控除額は次のとおりです。
【退職所得控除額】
800万円+70万円×(36年−20年)=1,920万円
【課税対象所得】
(2,000万円−1,920万円)×1/2=40万円
この40万円に対して税金が計算されるため、結果として税負担をかなり軽くできるというわけです。
年金形式で受け取る場合の注意点
一方、退職金を年金形式で受け取る場合は、公的年金等控除の対象となります。
65歳未満であれば60万円、65歳以上であれば110万円が最低でも利用できます。 そして、公的年金等控除では控除できなかった部分については「雑所得」として課税される仕組みです。
また、課税所得が増えることで、所得税だけでなく住民税の負担も増える点にも注意が必要です。加えて、年金収入は社会保険料の算定対象にもなるため、社会保険料負担も増え、結果として手元に残る金額が想定よりも少なくなるケースが少なくありません。
こうした背景から、退職金を年金形式で受け取る場合、一時金と比べて不利になりやすいと言われているのです。
![[図表1]退職金の受け取り方別メリット・デメリット 出典:著者作成](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/0/6/540mw/img_06e4cb1eeda6e8fa56e3fcf22841357d40731.jpg)
![[図表2]勤続年数による退職所得控除額の違い 出典:著者作成](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/1/5/540mw/img_154d12a5984959a1f0c9893a6980561231671.jpg)