厚生労働省「令和6年版厚生労働白書」によると、2024年時点の標準的な年金受給世帯(夫婦2人の基礎年金+夫の厚生年金)の受給額は月23万円でした。こうしたなか、物価上昇などを背景に年金生活が苦しくなった結果、「子どもからの仕送り」に頼るケースも少なくありません。ただし、子どもへの「過度な依存」は親子関係に亀裂をもたらすことがあるため、注意が必要です。68歳夫婦と41歳息子の事例をもとに、注意点をみていきましょう。
海外旅行に行きたいんだ…〈年金月21万円〉と〈子の仕送り月5万円〉で暮らす60代夫婦、帰省中の41歳息子に“冗談交じりのおねだり”→息子の「まさかの回答」に絶句【CFPが警告】
老後破綻を招く、現役時代の見落としがちな原因
老後資金不足に悩む人のなかには、現役時代のお金の配分に問題があったケースも少なくありません。
たとえば、子どもの教育費。周囲に合わせ中学から私立に通わせた結果、大学卒業までの教育費が想定以上に膨らみ、老後資金が十分に確保できなくなるケースです。
また、住宅ローンの繰り上げ返済に力を入れすぎたことで手元資金が薄くなり、年金生活に入ってから家計の不足分を補えなくなるケースもみられます。
さらに、ピーク時の年収を基準にキャッシュフローを組んでしまい、役職定年などで収入が下がった際に家計が追いつかず、そのまま老後資金不足を招いてしまうパターンも多いです。
住居費・教育費・老後資金は「人生の三大資金」といわれますが、どこに重点を置くかは家庭によって異なります。ただし、極端な振り分けをした結果、老後に子どもへ負担をかけることになってしまっては、親として本意ではないでしょう。
北口家の「その後」
年金と和樹さんからの仕送りを合わせ、月26万円で生活していた清一さん夫婦。しかし、和樹さんからの“最後通告”を受け、あわてて資金繰りを見直すことにしました。
定年後に始めた清一さんのスポーツクラブや、理恵子さんの手芸教室を辞め、さらに外食の回数を減らせば、年金の範囲内で暮らすことも不可能ではありません。
しかし、「生活レベルを大きく落としたくない」というのが夫婦の本音。そこで清一さんは、アルバイトを始めることにしたそうです。スポーツクラブの仲間から紹介された仕事で、市の施設の管理業務。週2日働いて、月4万円ほどの収入になります。
息子の和樹さんに報告すると、「もし本当に困ったら相談してくれ」と言われたそうです。関係が完全に元通りになることはありませんが、歩み寄れる余地が残っていることに、ほっと胸をなでおろしました。
和樹さんには、いま守るべき新しい家族がいます。その姿を見て、清一さん夫婦はようやく気づきました。
「これからは、子どもに頼らず、自分たちの足で立っていかなければならない」
その思いを胸に、夫婦は前を向き始めたのでした。
山﨑 裕佳子
FP事務所MIRAI
代表