老後破綻を招く、現役時代の見落としがちな原因

老後資金不足に悩む人のなかには、現役時代のお金の配分に問題があったケースも少なくありません。

たとえば、子どもの教育費。周囲に合わせ中学から私立に通わせた結果、大学卒業までの教育費が想定以上に膨らみ、老後資金が十分に確保できなくなるケースです。

また、住宅ローンの繰り上げ返済に力を入れすぎたことで手元資金が薄くなり、年金生活に入ってから家計の不足分を補えなくなるケースもみられます。

さらに、ピーク時の年収を基準にキャッシュフローを組んでしまい、役職定年などで収入が下がった際に家計が追いつかず、そのまま老後資金不足を招いてしまうパターンも多いです。

住居費・教育費・老後資金は「人生の三大資金」といわれますが、どこに重点を置くかは家庭によって異なります。ただし、極端な振り分けをした結果、老後に子どもへ負担をかけることになってしまっては、親として本意ではないでしょう。

北口家の「その後」

年金と和樹さんからの仕送りを合わせ、月26万円で生活していた清一さん夫婦。しかし、和樹さんからの“最後通告”を受け、あわてて資金繰りを見直すことにしました。

定年後に始めた清一さんのスポーツクラブや、理恵子さんの手芸教室を辞め、さらに外食の回数を減らせば、年金の範囲内で暮らすことも不可能ではありません。

しかし、「生活レベルを大きく落としたくない」というのが夫婦の本音。そこで清一さんは、アルバイトを始めることにしたそうです。スポーツクラブの仲間から紹介された仕事で、市の施設の管理業務。週2日働いて、月4万円ほどの収入になります。

息子の和樹さんに報告すると、「もし本当に困ったら相談してくれ」と言われたそうです。関係が完全に元通りになることはありませんが、歩み寄れる余地が残っていることに、ほっと胸をなでおろしました。

和樹さんには、いま守るべき新しい家族がいます。その姿を見て、清一さん夫婦はようやく気づきました。

「これからは、子どもに頼らず、自分たちの足で立っていかなければならない」

その思いを胸に、夫婦は前を向き始めたのでした。

山﨑 裕佳子
FP事務所MIRAI
代表