厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況」」によると、日本では同居20年以上の「熟年離婚」が増加しているようです。朝日新聞取材班による著書『ルポ 熟年離婚』(朝日新聞出版)より、出版社で管理職を務める57歳夫との離婚を決意した51歳妻の事例を紹介します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
“飲みにも行かず、浮気もしない”出版社勤務の57歳エリート夫が、妻から「離婚」を告げられたワケ【ルポ】
長男の進学を機に、夫婦仲は険悪に…
長男が4月、関西の大学に進学すると、夫婦だけの生活になった。耐えられず、女性は実母の介護をするという理由で千葉県にある実家へ戻った。夫に月々の生活費である婚姻費用を請求した。婚姻費用とは夫婦、未成年の子どもが生活するうえで必要な衣食住の費用、医療費、子どもの養育費などが含まれる。
法律上の夫婦は互いに生活を支える義務があると民法第760条に定められているので、収入が多い側が少ない側に支払うのが一般的だ。別居していても支払う義務がある。
一つは、夫が会社を60歳で定年になった後、年金がもらえる65歳までの間、働き口が見つからないのではないかという老後の不安を感じたこと。もう一つは、遺産相続できたこと。女性の父親が亡くなり、一人娘だったため、数千万円が入ってきた。実家に戻れば家賃負担もなく、夫から自立できるメドが立ったことだ。
長男の学費は女性の実母にすでに援助してもらっている。遺産は財産分与の対象外なので夫には話していないという。女性はこう話す。
「夫との生活に戻ることはもうない。新しい生活をしたい」
朝日新聞取材班