「子どもに迷惑をかけたくない」「ひとり暮らしが不安になった」「話し相手が欲しい」などの理由から、終の棲家として「老人ホーム」を検討する人が増えています。老人ホームにはさまざまな区分があり、主体とするサービスによって金額も異なるため、慎重な選択が必要です。そこで今回、老人ホームへの入居を後悔していた79歳男性の事例をもとに、失敗しない施設の選び方をみていきましょう。
老人ホームなんて入らなきゃよかった…年金月20万円の79歳男性、自宅を売って「有料老人ホーム」に入居→わずか半年後に起きた「取り返しのつかない後悔」
なぜこんなに高い費用を負担しなければ…深まる後悔
「こんなことなら住み慣れたわが家で穏やかに最期を迎えたかった」
「なにも楽しめないのに、なんでこんなに高い費用を払い続けなきゃいけないんだ」
自宅を売却していたことで「自宅に戻ることはできない」という現実も耕造さんを苦しめました。施設へ入居した選択が精神面と経済面での負担となってしまったのです。
「老人ホームなんて入らなきゃよかった……」
落ち込んだ耕造さんは、訪ねてきた息子に対して涙ながらにこう漏らします。
父の様子を見かねた息子は、父を元気づけるために介護施設や費用体系について調べ始めました。
息子が見つけた「別の選択肢」
息子が調べた結果、現在の耕造さんに適した「介護を主とする施設」に転居するほうが、費用も抑えられるうえ、リハビリなどのサービスも受けられることがわかりました。
現在の自立型施設ではリハビリのサービスがなく「日常生活サポートはオプション扱い」で割高です。しかし、介護主体の施設であればサービスが包括されており、月額費用を抑えることができます。
耕造さんは当初「自宅を売ってしまった以上、もう取り返しがつかない」と深く後悔していました。しかし、息子の後押しで転居を決断、いざ移ってみると、職員による日常ケアが手厚く、リハビリも受けられる環境でした。
新しい施設に移ってから数ヵ月、耕造さんの表情は明るくなりました。いまでは積極的にリハビリに参加しています。
以前のような自由な活動は難しいものの、スタッフが常に見守ってくれる安心感があり、介護費用も明確で予測が立てやすい環境に落ち着きました。
施設選びは「いまの自分」ではなく「未来の自分」を想像する
耕造さんのケースでは、老人ホーム選びの難しさがありました。
・ 入居時は元気でも、数ヵ月で介護が必要になることは珍しくない
・ 有料老人ホームは「自立型(健康型)」「介護型」で費用構造が違う
・ 前払金が大きいほど「施設を変更しづらい」という心理的負担がある
老人ホームを選ぶ際には「いまの状態」ではなく、将来に要介護になった場合の生活や費用を含めて検討しましょう。
耕造さんの後悔は、誰にとっても起こり得る現実です。同じような思いをしないためにも家族や専門家と一緒に将来を見据えた施設選びをすることが求められます。
武田 拓也
株式会社FAMORE
代表取締役