ついに我慢の限界を迎えた息子

そんなある日、Aさんの家を訪れていた孫たちが近所の森で遊んでいたところ、下の子がシマヘビに噛まれてしまいました。さらにその夜、Aさん宅の天井から大きな蜘蛛が現れ、孫たちは絶叫。恐怖を感じた孫2人は、もうAさん宅には行きたくないと言い出すようになりました。

「ヘビは毒がなかったからよかったけど、やっぱり森は危ないよ。それに、家も古くて子どもたちが気味悪がっているんだ。孫に会いたいんなら、テーマパークに連れて行ったり家をリフォームしたり、孫が『おじいちゃんの家に行きたい』って言うような努力をしてよ」

Cさんは、妻と相談のうえ、ついに父であるAさんに本音をぶつけます。しかしAさんは、

「そんな軟弱な考えでどうする。都会でゲームばかりしているからそうなるんだ。強くなるためにも、もっとうちに来たほうがいいぞ。で、次はいつ来る?」

と、Cさんの訴えを一切聞き入れません。

Aさんの極端な節約精神や頑固な考え方は、息子であるCさんもずっと不満を持っていたところでした。それがCさん自身の進学先や部活、塾など、人生を左右することもあったからです。

自分だけのことならまだともかく、孫に対しても一切対応を変えない父親に、Cさんはついに我慢の限界を迎えました。

「父さん……悪いけど、俺たちが実家に帰ることはもうないと思う。家族よりも大事なお金と一緒に生きていってください」

節約よりも大切な「お金の使い方」

もともと温厚なCさんは、一度怒ると簡単には許してくれません。自分ゆずりの頑固さがあることはAさんも知っていました。

こうして、もう孫に会えなくなることを悟ったAさんは後悔に苛まれ、孤独の日々を過ごすことになりました。

Dさんの父母がCさんの説得に動いていますが、はたしてAさんとCさんの関係が修復されるか、孫たちにまた会えるかは、Aさんが変われるかどうか次第でしょう。

老後のお金を準備すること、また、死後の相続のことまで考えておくことは大事です。しかし、充実した日々を送れなければ意味がありません。お金を使わないことによって、お金より大事なものを失ってしまうこともあります。

そうならないためにも、お金を貯めるうえでは「なににいくら使うか」を計画しておきましょう。上手なお金の使い方を知ることが、充実した生活への第一歩となるのです。

五十嵐 義典
CFP
株式会社よこはまライフプランニング 代表取締役