「いつかは家を出るだろう」と思っていたのに、気づけば子どもは40代になっても実家暮らし――いわゆる“子ども部屋おじさん”状態が続く家庭もあります。しかし、逆に、親と同居する子どもに生活を支えられているケースも少なくありません。今回は、ずっと息子と一緒に暮らすと思っていた母の事例を通して、親が子に依存する注意点をファイナンシャルプランナーの小川洋平氏が解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
このまま一生一緒に暮らすんじゃなかったの?…〈年金月14万円〉69歳母、夕食の席で絶叫。原因は43歳独身・同居息子の「喜びの報告」
子どもの収入や存在に依存しすぎた母親
親が子どもに過度に依存すると、いずれしわ寄せが来ることがあります。特に子どもの収入に頼る家計は、子どもにとっても負担となり得ます。
本来なら、子どもの成長や活躍は喜ぶべきこと。しかし、家計や暮らしへの影響が大きいと、喜びより不安や悲しさが勝ってしまうこともあります。今回のように、感情的に子の足を引っ張る言葉を口にしてしまう場合もあるのです。
「お金の不安」は、思考や判断力を鈍らせ、大切な人との関係にひびを入れることさえあります。老後を穏やかに過ごすには、経済的余裕と自分自身の「心の自立」が欠かせません。自分がこれからどんな生活を送りたいか考え、公的年金の見込み額や必要な支出を整理し、資産の準備や不足分の対策を立てること。これがあれば、少なくともお金の面での不安はなく、子どもを安心して送り出せたはずです。
子どもが巣立つことを喜べるように…経済的・精神的な自立を
今回は、自分の不安や都合が先立ち、実家暮らしの独身の息子の栄転を喜べなかった母親の事例をお伝えしました。
たとえ「ずっと一緒だと思っていた」としても、子どもが巣立つタイミングがいつ来るかはわかりません。その時がきたときのために、親は、経済的・精神的に自立し、子どもの足を引っ張らないようにすることが大切です。
生活費のこと、いずれ介護が必要になったときのこと――老後の準備をしていても、子どもには多少なりとも負担は掛かるものです。そうした負担を少しでも軽くできるよう、自立して生活できる生活設計と介護資金等の準備など、お金と心の準備をしておくことが大切です。
小川 洋平
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