近年、「終活」という言葉が一般的になり、家族に負担をかけないための生前対策として関心が高まっています。一方、そんな終活を謳ったセミナーを入口に、不当な勧誘や押し売り、高額商品の販売など、高齢者の財産を狙った悪質な行為が後を絶ちません。60代の大野夫妻(仮名)の事例から、終活に潜むリスクとその対策をみていきましょう。辻本剛士CFPが解説します。
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夫婦の「その後」
詐欺被害に遭わないための対策・予防策
今回、和代さんがハマった終活セミナーでは、遺言書やエンディングノートの作成練習、アンケート記入などを通じて、参加者の預貯金額や有価証券、保有不動産といった個人情報が把握されていました。こうした情報は悪質な事業者にとって「ターゲットを定める材料」となるため注意が必要です。
終活詐欺の被害を防ぐためには、次のことを徹底しましょう。
・訪問購入や勧誘は即決しない
・信頼できるセミナーを選ぶ
・情報は逐一家族と共有する
終活詐欺の被害を防ぐには、冷静な判断を心がけることが大切です。勧誘を受けても即決せず、契約書を持ち帰って家族や専門機関に相談すれば、被害に遭うリスクはグッと低くなります。
また、終活セミナー自体が危険というわけではありません。むしろ、自治体やシニア向けイベントとして公開されているものは信頼性が高い傾向にあります。一方、主催者や講師が不明瞭で、商品販売を強調するセミナーには注意が必要です。
最後に、終活は1人で抱え込まず、まずは家族と話し合いましょう。おひとりさまの場合は、行政の窓口を活用することで安心して準備を進めることができます。
夫婦で終活を再出発させた大野夫妻
その後、忠男さんは妻を説得し、契約を取り消すべく運営側に申し出ましたが、高額なキャンセル料が発生。結果として数百万円の損失を抱えることになりました。
自らの行動で子どもたちに遺す財産を減らしてしまった和代さんは、大きなショックを受けた様子です。
一方の忠男さんは、強く責めたことを反省しつつ「私や子どもたちのことを想って行動してくれたことは感謝している」と伝え、夫婦は今後2人で終活を行うことを約束。夫婦は地域包括支援センターに相談し、専門の職員から的確なアドバイスを受けています。
終活は不安や焦りから独断で進めるのではなく、専門家や行政の窓口を頼ることが大切だと学びました。損失は決して小さくありませんでしたが、夫婦は前を向き、万が一の際の準備を少しずつ進めているようです。
辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表/CFP