「親を当てにするな」…過去に発した言葉の後悔

そんな林さんが重い腰を上げたのは、テレビでファイナンシャルプランナー(FP)という存在を知ったからでした。人生の終盤を迎えて、一度お金のプロに相談をしたいと思ったのです。林さんはインターネットで探したFPの事務所を訪れました。

最初は老後資産や相続に関する一般的な説明を聞いていた林さん。しかし、話が進むうちに、林さんは長年誰にも言えなかった胸の内をぽつぽつと話し始めました。

「私はもう78歳。あと何年生きるかわかりません。それに、もし体が動かなくなったら、老人ホームに入るかもしれません。お金を減らすわけにはいかないのです」

林さんの状況を聞いたFPは「たとえ今後、老人ホームに入居されたとしても、十分生活できます」と説明しましたが、林さんの表情は晴れません。頭に浮かんだのは、大学進学を控えた孫たちの姿と、教育費を工面するために必死に働く娘たちの様子でした。

「実は昔、娘たちに『教育費は親を当てにしないで自分たちで何とかしなさい』と言ってしまったことがあるんです。今思えば、あの一言で関係が変わってしまったかもしれません」

林さんの声には深い後悔がにじんでいました。

「孫たちをお金で甘やかすのはよくないけれど、学費の援助くらいしてもよかったのではないかと……。もう手遅れでしょうか?」