不満を生まない援助にするための4つのポイント

では、どうすればこうした不公平感を避け、家族の関係性を守れるのか、4つのポイントをお伝えします。

1.援助の「ルール」を決める
その場その場の思いつきで援助するのではなく、あらかじめ「上限」や「基準」といったルールを決めておきましょう。
(例)
 ・子ども一人あたり援助は生涯で〇〇万円まで
 ・孫一人につき進学祝いは〇〇万円まで

2.援助の「見える化」
誰に、いつ、いくら援助したかをエクセルやノートなどに記録しておきましょう。援助額が明確になっていれば、後から「隠れて援助していた」と疑念を持たれることも防げます。

3.援助と相続をリンクさせる
もし援助額に大きな差が出た場合には、遺言やエンディングノートに「援助分は相続で調整する」といった旨を記しておくのも有効です。これにより援助を「生前贈与」とみなして相続財産から差し引くことで、相続時の不満を和らげることができます。将来の争いを防ぐためにも、意思を形として残すことが大切です。

4.援助は「余力の範囲で」
老後に必要な生活費や医療費、介護費を試算したうえで、その余剰資金の中から援助するのが鉄則です。「孫にお金をかけすぎて自分たちが困る」という事態だけは避けなければなりません。まずは親自身の生活の安心を最優先しましょう。

家族の安心を守る援助にするために必要なこと

子や孫への援助は愛情の表れであり、それ自体はすばらしいお金の使い方です。しかし、せっかくの善意が原因で家族間に溝を生んでしまっては、元も子もありません。援助を行う上でのルールを考え、計画や思いを子どもと共有することが大切です。

後日、大西さんは3人の子どもを集め、話し合いの場を設けました。

「これまで支援した額を整理してみた。これからは、みんなに公平になるように、ルールを決めて支援していこうと思う」

子どもたちは少し驚いたものの、数字を見せながら説明すると、徐々に納得の表情に変わっていきました。長女も、「最初からそう話してくれれば、こんな気持ちにならなかったのに」と、安心したようでした。

お金は、使い方次第で家族の助けにもなれば、トラブルの火種にもなります。せっかくの善意を「争いの種」にしないために、家族と援助を行う上でのルールや思いについて共有しておくことが、未来の家族の安心につながります。

伊藤 寛子
ファイナンシャル・プランナー(CFP®)