(※写真はイメージです/PIXTA)
優先順位は「恋より推し活」
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いわく、「萌え」の時代(10年ごろまで)は、キャラクターやタレントなどの対象に「内的な(恋愛とも性愛ともつかない)」、1対1の感情を抱いたのに対し、推しの時代(11年以降〜)は、おもにファン同士、あるいはファンと推し自身が「(対象に)何かを与えたい」「共に何かをしていきたい」という感情を抱くようになったとのこと。
「仲間と共に」の概念は、キーワード「共創」とも一部、共通します。とくに「ハッシュタグ(#)」文化が「インスタ映え」などのブームによって定着した17年以降は、「#〇〇好きな人と繋がりたい」などと「〇〇」部分に推しを入力してつぶやけば、一瞬にして同じ趣味や嗜好を持つ人々と繋がれる時代になりました。
つまり「推し」には、特定の対象への愛情を皆でシェア(連帯)しながら、共に高みや深みを目指せる喜びがある。そのうえ、「対象が『仮想キャラ』など人間以外であれば、第三者と恋愛・結婚されてしまうなど、裏切られるリスクも低いのです」と中山氏。
ところが恋愛は、最終的に「1対1」になることを目指すので、仲間とも争う可能性がありますよね。もちろん裏切られるリスクもあるし、交際途中で「やめたい(別れたい)」と言っても、簡単に終止符を打てるとは限らない。それに比べれば、共創感情を伴う「推し」は、争いやストレスを避けたがるZ世代にとって、はるかに楽しい行為なのでしょう。
山梨県のIT企業に勤めるサラさん(24)は、韓国のボーイズグループ「RIIZE(ライズ)」推し。「私の脳内って、『エブリタイムライズ』なんで」。彼女はライズのCDやグッズ購入、韓国でのイベントやライブ参加のための往復交通費、宿泊費などに「1年間で70、80万円かそれ以上使ってるはず」とのこと。実は取材の2か月前まで、1年ほど交際した彼氏がいたそうです。でも当時から「週に1回会えれば十分」という程度で、優先順位は明らかに低かった。
「別れてよかったです。つねにライズのこと考えられるから」
彼女に似た傾向は、ほかのZ世代からもうかがえます。恋人がいないわけではない、恋愛にまったく興味がないのでもない、でも明らかに推しより「優先順位」が低い印象なのです。
22年、CCCMKホールディングスが、Z世代の社会人(19〜29歳)らに聞いた調査でも、社会人女性が「大事なもの」として挙げた4位は「趣味」、5位が「推し活」で、いずれも「恋人や恋愛」(6位)を上回りました。同男性では「恋人や恋愛」(30.1%)が推し活よりは上位ですが、「趣味」(54.8%)の回答は、恋愛より約25%も多く、「お金」に次ぐ2位でした(「若者の恋愛実態調査」)[図表]。
まさに、Z世代の「恋より趣味」「恋より推し活」を反映した結果と言えるでしょう。
牛窪 恵
世代・トレンド評論家
