ソニー生命の調査によると、祖父母が教育資金として子や孫に資金援助をした平均額は124万円。なかには1,000万円以上の援助を実施しているケースも少なくありません。しかし、それが経済的な負担となり親子間の関係性に亀裂が入ることもあります。辻本剛士CFPが、とある親子の事例をもとに、過度な援助がもたらすリスクと、親子関係を長く良好に保つためのポイントについて解説します。
敬老の日が待ち遠しい…義実家から“煙たがられている”年収550万円の43歳サラリーマン、それでも「会いに行きたい」とゴネる歪んだ理由【CFPが解説】
“アイツ”呼ばわり…武司さんが「義理の息子」を嫌う理由
その理由は、娘夫婦が池本夫妻のお金をアテにしているからです。
これまでも、出産祝い100万円、入園祝い30万円などと、ことあるごとにお祝い金を渡してきた池本夫妻。誕生日や季節行事で娘一家が帰省する度に欠かさず包んできましたが、それが悪夢の始まりでした。
「住宅ローンがキツくて……」「急な出費があって……」
しだいに義理の息子の直樹さんは、向こうから金銭援助を遠回しに要求してくるようになったのです。そして敬老の日の今回も案の定、直樹さんは池本さん宅に着くなり、お金の話を切り出しました。
「お義父さん、娘2人の教育費が大変で……」
直樹さんによれば、小学校に入学した長女は、塾やスポーツ、ピアノなど多くの習い事をさせているそう。毎月の出費は約5万円、夏期講習などに参加すれば10万円を超える月もあるといいます。
一方、直樹さんの年収は550万円。昇給も期待しにくく、副業を考えてはいるものの、体力的に厳しいと訴えます。それでも、「教育費だけはどうしても準備しなければならない」と眉を八の字にし、必死さを装ってわかりやすいほどに媚びてくる義理の息子。
ななみさんが「もうやめといたら」となだめても、直樹さんはゴネます。
「次会える日が待ち遠しいな」「いまのうちに、もらえるもんもらっとかないと」
自宅のソファに寝ころびながら、そうこぼしていたのです。
その真意が透けてみえ、武司さんはますます嫌気がさすのでした。
義理の親子関係の難しさ
義理の親・子との関係においては、一定の距離感を保つことが大切です。特に金銭面で距離が近すぎると、親側にとっては負担となりやすく、場合によってはトラブルに発展しかねません。
さらに、過度な援助は子ども世帯の経済的自立を妨げる要因にもなります。親からの支援が当然となれば、自ら計画的に家計を管理する意識が薄れ、依存的な姿勢を強めてしまう可能性があるからです。
こうした事態を防ぐためにも、以下の点を押さえておくことが重要でしょう。
・援助は「特別なとき」に限定する
・経済的な援助以外の形(知恵や経験の共有など)で支える
・援助についてスタンスを家族と共有しておく