遅くに結婚する人の増加に伴い、子どもを遅く産む人も増えています。その場合、子どもが成長するにつれ、教育費や住宅ローンの負担が重くなり、老後資金をまったく準備できないまま定年を迎えるケースが少なくありません。今回は30代後半に生まれた子どもの教育費に悩む50代夫婦のケースとその解決策を、CFPの松田聡子氏が解説します。
甘く見ていました…世帯手取り月35万円・地方在住の54歳会社員、都内理系大学に通う息子の教育費「年270万円」に悲鳴。定年まで10年切るも「老後資金の準備ほぼゼロ」の苦し過ぎる現実【CFPの助言】
子どもにも協力してもらう、教育費と老後資金の両立戦略
30代後半以降に子どもを持つ予定の家庭では、人生の三大資金と呼ばれる教育資金、住宅資金、老後資金の計画的な準備が特に重要です。子どもが生まれる前から貯蓄目標を立て、家計を見直して貯蓄に回せる金額を確保します。その際、児童手当を、有効活用しましょう。
児童手当は3歳未満が毎月1.5万円、3歳から高校生年代までは毎月1万円支給され、総額約240万円になります。 子どもが中学生になると部活や塾通いで支出が増え、貯蓄が難しくなります。その場合でも最低限、児童手当だけは教育費の貯蓄に充てるようにしましょう。
また、子どもとの「約束事」を早期に決めることも重要です。「理系に進むなら国公立大学のみ」「私立大学なら自宅通学」など、家庭の経済力に応じた進路選択の基準を、子どもが中学生になる前に話し合っておくことをおすすめします。
既に困難な状況にある田代家では、大輔くんを巻き込んだ家計の正常化が急務です。まずは大輔くんにも現状を正直に伝え、奨学金の増額(月5万円から8万円へ)を検討してもらいましょう。
奨学金の増額に伴い、仕送り額の月5万円から2万円への減額にも応じてもらいます。家計がピンチの状態では月3万円の負担減は、大きな助けになるはずです。
また、扶養の範囲で働いていた美香さんも思いきって収入増を目指します。美香さんは派遣会社に登録し、1日6時間の週5日勤務で社会保険にも加入し、毎月5万円の収入アップを考えています。
健一さんは現状の収入増よりも、定年後の減収対策が重要です。住宅ローンを完全リタイアまでに完済するには、住宅ローンと教育ローンを返済できるだけの収入を確保しなければなりません。副業や資格取得といった対策を、早くから始めておきたいところです。
子どもの負担を増やすのは避けたいかもしれませんが、親が経済的に破たんすれば、子どもはより深刻な影響を受けることになるでしょう。状況に応じて最善の対策を講じることが、家族全員の安定した生活につながるのです。
松田聡子
CFP®